レ点腫瘍学ノート

Top日記2026年3月31日

JSMO2026反省会

JSMO 学会 腫瘍内科

86d85f6f88.png

例年のごとく、今年もJSMO2026反省会を行います。昨年も一昨年も実施しましたが、例年同様に「反省会」というタイトルであっても「ふり返り」という意味であり、ネガティブな意味ではありません。どのような会だったかを後年に忘れないようにし、記憶が新しいうちに所感を記録しておきます。誤解のないよう、よろしくお願いいたします。

過去のシリーズはこちら

JSMO2021反省会会場 - レ点腫瘍学ノート
JSMO 2021年のJSMO(日本臨床腫瘍学会)学術集会が終わりました。忘れないうちに感想を記録しておきます。反省会というタイトルにしていますが、ネガティブな意味ではないです。反省とは「これまでの自分の言動やありかたを振り返ってみて、別の立場から改めて観察・評価すること」です。はじめにWEB会議システム抄録システムプロ
JSMO2022反省会 - レ点腫瘍学ノート
JSMO 第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)-コンベンションリンケージ第19回日本臨床腫瘍学会学術集会 会期:2022年2月17日(木)~19日(土) 会場:国立京都国際会館/ザ・プリンス 京都宝ヶ池 会長:大江 裕一郎(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長) 運営:コンベンションリンケージh
JSMO2023反省会 - レ点腫瘍学ノート
JSMO2023 JSMO 学会 例によって例年のごとく、JSMO2023反省会を行います。これも昨年同様に、反省会というタイトルにしていますが、ふり返りという意味であって、ネガティブな意味ではありません。どういう会だったかを後年に忘れてしまうことがないように、新鮮な今の記憶をここに記録しておきます。なお過去のJSMOの反省会記事
JSMO2024反省会 - レ点腫瘍学ノート
JSMO2024 JSMO 学会 例年のごとく、今年もJSMO2024反省会を行います。これも例年同様に、反省会というタイトルであってもふり返りという意味であって、JSMO2024が良くなかったというネガティブな意味ではありません。どういう会だったかを後年に忘れてしまうことがないように、新鮮な今の記憶をここに記録しておきます。誤解な
JSMO2025反省会(Part1) - レ点腫瘍学ノート
#JSMO25 JSMO 学会 例年のごとく、今年もJSMO2025 #JSMO25 反省会を行います。昨年も一昨年も実施しましたが、例年同様に「反省会」というタイトルであっても「ふり返り」という意味であり、ネガティブな意味ではありません。どのような会だったかを後年に忘れないようにし、また来年以降も会員が楽しみながらためになる学術集会を
JSMO2025反省会(Part2) - レ点腫瘍学ノート
#JSMO25 JSMO 学会 Part1はこちら JSMO2025反省会(Part1)#JSMO25 JSMO 学会 例年のごとく、今年もJSMO2025 #JSMO25 反省会を行います。昨年も一昨年も実施しましたが、例年同様に「反省会」というタイトルであっても「ふり返り」という意味であり、ネガティブな意味ではありません

JSMO2026(第23回日本臨床腫瘍学会学術集会)が2026年3月25日から27日まで、パシフィコ横浜ノースで開催されました。会長は島根大学の田村研治先生です。ぼくは今年もTwitterにメモを垂れ流しながらリアルタイムで参加しましたが、昨年同様に密度の濃い3日間でした。年々少しずつ知り合いが増えて交流が広くなってゆく楽しみもありますが、それにともなってスケジュールもかなり過密だったので、最終日を終えた時点でかなりへばっていました。

会場と運営会社

今年の会場はパシフィコ横浜に新しく設立されたパシフィコ横浜ノースです。ぼく自身はパシフィコノースは初訪問でした。会場全体のつくりは悪くなく、広い展示ホールと複数の会議室が機能的にまとまっています。一つ一つの部屋が広く(そのために立ち見がでることは少なくほとんどの講演で聴講者はみな着席できていたようです)、スクリーンも大きく会場の後ろの方からも見やすく、新しい会場だけあって洗練されたコンベンションセンターという印象でした。

ただ、ひとつ気になる点としては2階と3階を結ぶエスカレーターが細すぎます。セッションの合間に移動する人の流れが重なるたびに渋滞が発生していて、「これはなんとかならんのか」と思いながら何度か並びました。会場地図を見るとPAP会場と第9会場の間に階段があったようなので、あれを開放して流れが誘導できれば良いのになぁ。

PAP会場と第9会場の間の階段が使えれば・・・
PAP会場と第9会場の間の階段が使えれば・・・

一部のランチョンセミナーの行列がすごかったです。中でも中外製薬の武藤先生・角南先生が登壇するパネル遺伝子検査関連のセッションは、開始前から廊下に長い列ができていました。弁当が売り切れても並んで聴講しようとしていた人もいたようなので、一部のSNSで出ていたランチョンセミナー不要論もありましたが、やはり学会で聞きたい話としての根強い需要はあるのだなと感じました。

運営会社はコングレさん、抄録アプリはお馴染みのMICEnaviです。どちらも毎回非常に評価が高く、間違いありません。MICEnaviは抄録アプリとしてだけではなく、WEB配信演題やオンデマンド廃人のたたち

プログラムの類似テーマ開催時間「ぶつかり」問題

今年、ぼくが複数回Xに書いたのが、プログラムの時間帯の重複問題です。たとえばDay3朝は「がん教育」「医学生・研修医のキャリア形成」「新専門医制度シンポジウム」がすべて同じ時間帯に並んでいました。これらはターゲットが重なっています。がん教育やキャリア支援に関心のある若手医師や研修医とその指導医層が、どれを選べばよいか迷う状況です。

似たテーマのプログラムが同じ時間帯に隣の部屋で開催されており、どちらか片方を選ぶ必要がある
似たテーマのプログラムが同じ時間帯に隣の部屋で開催されており、どちらか片方を選ぶ必要がある

Day1午後にも「次世代がん創薬の開発実践」と「希少フラクションの医薬品開発」が同じ時間帯で横並びに行われていました。創薬関係やPhase I関係の参加者はどちらに参加するか迷った人もいるのではないでしょうか。

演者や座長の配分、会場の規模、その他の多数の要素を調整した結果としてこのプログラムが出来ているのだと思いますが、関連性の高いセッションはなるべく別の時間帯に置いてほしいというのが参加者としての率直な感想でした。プログラム委員会の方の苦労は並々ならぬものだと思いますが、聞きたい演題が聞けないということができるだけ減ればと思います。なお、今回はオンデマンド配信がかなり多くのセッションで認められているようですので、後日のオンデマンド配信でキャッチアップしてゆきたいと思います。

スライド撮影とSNS解禁の取り組み

今年のJSMO2026にあった変化のひとつが、スライドの撮影とSNS投稿の解禁です。日本の多くの学術集会ではスライド撮影が禁止されていますが、JSMO2026ではほとんどのセッションでスライドを写真に撮ってSNSに投稿することができるようになりました。これは学術情報を社会と共有するという点で大きな一歩だと思います。学会の情報を外に届けるという観点では、スライドの一枚が入るだけで伝わるものが全然違います。JSMO公式のSNS-WGが会期中にSNS発信のメリットや投稿方法を解説するセッションを開いていて、「みなさん、ポストしてみましょう!」と参加者に呼びかけていたのが印象的でした。

まだまだ全体の投稿数は少ないのが実情で、ASCO26の会期中にタイムラインに溢れかえるスライド写真の量と比べると差は歴然です(後日追記:この点については別記事に詳しく書きました)。ASCOやESMOは参加者全体がほぼリアルタイムで情報を共有し合う雰囲気があって、会場外にいる人も一緒に学会に参加しているような感覚が生まれています。JSMOもそのような空気が醸成されてくれば、もっと盛り上がっていくのではないかと思います。

自動翻訳の試験運用

会場ではポケトークのAI自動翻訳の試験運用が行われていました。英語セッションの音声をほぼリアルタイムで日本語字幕として表示する試みで、一部の会場のサブスクリーンに字幕が流れていました。JSMOは海外参加者が全体の3割を占めるとされており、英語のセッションは年々増えてきています。英語が得意ではない参加者や、薬剤師・看護師をはじめとする多職種の方々が英語セッションに足を運びやすくなるという意味で、この取り組みはありがたい話です。

精度面では、演者が速く話す場面や専門用語が連続する場面で翻訳が追いつかなくなることがありましたが、全体としては「何を言っているかの大筋はわかる」レベルにはなっていたと思います。数年前の機械翻訳とは雲泥の差です。ASCOやESMOではこうした翻訳支援は聞いたことがないので、多言語対応という点ではJSMOが先行しているかもしれません。ただ、字幕の遅延がどうしても数秒あるため、会場でのリアルタイムのやりとりやQ&Aセッションではまだ使いにくい面もあります。今後バージョンが上がってレイテンシーが縮まれば、英語セッションへのハードルはかなり下がるでしょう。来年以降の改善を楽しみにしています。

印象に残ったセッション

教育企画部会「魅力ある臨床実習とは」

教育企画部会が企画したこのセッションは、腫瘍内科が学生にどう見られているかを正面から議論したもので、なかなか興味深い内容でした。臨床実習に対する学生のモチベーションを高める工夫をこらして医局員の増加までつなげた産婦人科の先生の取り組みをご紹介いただきました。産婦人科と違って手技・手術が少ない腫瘍内科で同じことを行うのは難しい面もありますが、学生の興味関心を引き出す工夫を凝らすという視点は非常に勉強になりました。ちなみに、この講演に対するディスカッションの中でコメントされていた学生から見た腫瘍内科のイメージとして挙げられたのが、「地味」「つまらない」「治らない」「そもそも診療科として知らない」「キャリアパスが不明」という言葉たちです。聞いていて「わりと図星だな」と思いました。

また、がん研有明の三浦先生が言っていたことが印象に残っています。「抗がん剤の専門家として振る舞うより、がん患者とともに歩んでいる姿を見せたほうが、響く学生には響く」という話でした。「薬を使う人」としての腫瘍内科ではなく、「患者の道案内役としての腫瘍内科」をイメージさせるほうが、実習の魅力につながるという考え方です。腫瘍内科は決して地味な診療科ではない(と思う)のですが、「地味に見える」のには理由があって、専門病院や拠点病院の機能分化が進んだ結果として患者と密接に関わる姿が学生の目に触れにくくなっている、という構造的な問題も背景にあると思います。ぼくが勤めているような地方の市中病院は、むしろ患者と近い腫瘍内科の姿を見せるのに適した環境かもしれません。

緩和医療系セッション

便秘専門医の結束貴臣先生の講演が予想外に刺さりました。「便秘診療にはラポール形成が大切」というのが今日一番のテイクホームメッセージだったのですが、言われてみれば当たり前のようで、なかなか日常診療では意識できていません。排便の問題は患者が話しにくいと感じているテーマのひとつで、医師側も「問診票に書いてあれば確認する」程度で終わらせてしまいがちです。信頼関係なしには正確な情報も得られないという話は、便秘に限らず症状マネジメント全体に言えることです。

がん薬物療法専門医シンポジウムについて

JSMO2026がん薬物療法専門医試験シンポジウムレポート - レ点腫瘍学ノート
がん薬物療法専門医 JSMO 学会 2026年3月のJSMO2026(第23回日本臨床腫瘍学会学術集会)大会長を務められた田村研治先生は、がん薬物療法専門医制度の確立と推進に長年尽力してきた腫瘍内科医です。その田村先生が大会長を務めるJSMO2026では、がん薬物療法専門医と専門医制度に関連した会長企画が複数組まれ、制度の現状と将来

田村会長肝いりの専門医制度シンポジウムについては、内容が濃かったので別記事にまとめています。機構専門医への移行とJ-OSLER-Oncol導入、模擬面接の「炎上編」など、受験を考えている先生方には読んでほしい内容です。

このシンポジウムの中でぼくが一番ぐさっときたのは、「お勉強だけが得意なEBM小僧になってはいけない」という言葉でした。

そこから「市中病院の腫瘍内科医は、患者を診て実地で汗をかかなければいけない」という話も続いていて、週一桁外来・ベッドフリー・コンサルのみ、という腫瘍内科のあり方への問題提起でした。ぼく自身はこの言葉に同意する側ですが、地方の市中病院で一人でやっている腫瘍内科医にとっては、「汗をかく」環境自体が整っていないというケースも少なくありません。

まとめ

今年のJSMO2026で個人的にいちばん印象に残ったのは、学会そのものの変化です。スライドのSNS投稿が多くのセッションで解禁され、AI翻訳字幕が試験導入され、パシフィコ横浜ノースという新しい会場でエスカレーター渋滞と格闘しながらも、学会が「外に開いていこう」としている姿勢を感じる3日間でした。プログラムのぶつかりや会場導線など細かい改善点はありますが、改善の方向に向かっていることは間違いないでしょう。

事務局の方々をはじめ、運営に携わったすべての方々にお礼を申し上げます。

この記事に対するコメント

このページには、まだコメントはありません。

お名前:


更新日:2026-03-31 閲覧数:18 views.