レ点腫瘍学ノート

Top日記2026年7月29日

緊急情報発信手段としての病院公式SNS

SNS 病院広報 ブランディング

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済生会熊本病院が、地震の影響で本日の受診を制限するという案内をFacebookに出していました*1。これを見て、こういう情報こそ病院が自分の口で出せる場所を持っておくべきだと感じました。同じ内容を紙に刷って玄関に貼り出しても、読めるのはすでに病院まで来てしまった人だけです。来る前に知りたかった人には、何も届きません。

済生会熊本病院
【重要:第一報】地震発生に伴う診療体制の変更について(7月28日17:35時点)本日発生いたしました地震の影響に伴い、当院では患者様の安全確保と緊急医療体制の維持のため、診療体制を一時的に変更させていただきます。地域の救急医療を優先するための措置となりますので、ご理解とご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。【診療体制の詳細】◆外来診療について...
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緊急情報発信手段としての病院公式SNS

災害時に病院が伝えたいことは、たいてい「今日は来ないでほしい」か「ここは開いています」のどちらかです。前者はとくに厄介で、伝わらなければ患者さんは平時と同じつもりで家を出ます。玄関の貼り紙は、その人が到着してから初めて機能します。道路が寸断されていたり余震が続いていたりする状況では、それは遅すぎます。

病院の外に情報を出す手段として、たいていの施設はウェブサイトを持っています。ただ、災害のさなかにそのウェブサイトが本当に動くかというと、いくつも条件がついてきます。

病院公式ウェブサイトは災害時に更新できないことがある

まず、更新の手続きが人に依存している施設が少なくありません。制作を外部の業者に委託していれば、先方に連絡がついて作業してもらう必要があります。院内に担当部署があったとしても、その担当者が出勤してこなければ本文は書き換わりません。深夜や休日に地震が起きたとき、この条件は簡単には満たされないはずです。

配信の仕組みにも時間差があります。CDNのキャッシュを挟んでいるサイトでは、管理画面で書き換えた内容が読者の画面にすぐ反映されるとは限りません。数分の遅れが致命的になる場面はそう多くないかもしれませんが、「更新したのに出ていない」という状態は、対応にあたっている人の判断を狂わせます。

もっと直接的な問題もあります。ウェブサイトを院内のサーバーでホストしている場合、停電や浸水や火災で建物側が被害を受ければ、診療機能とホームページが同時に落ちます。いちばん情報を出したい瞬間に、出す手段ごと失われるわけです。診療機能を支える院内システムと、外向けの情報発信は、そもそも別の場所に置いておくべきものです。レンタルサーバーにミラーを持たせるだけでも、建物側の事故から切り離せます。

その点でSNSは事情が違います。アカウントとパスワードさえ分かっていれば、当直帯でも自宅からでも、スマートフォン一台で発信できます。基盤は外部にあるので、院内の電源や回線が落ちても止まりません。応答の速さと落ちにくさの両方で、ウェブサイトにはない性質を持っています。

フォロワーのいないアカウントでは発信力にならない

では、いますぐアカウントを作ればよいのでしょうか。作っておくこと自体は必要です。ただ、それだけでは足りません。災害が起きてから開設された、フォロワーが0人で昨日できたばかりの「病院公式」を名乗るアカウントを、その場にいる人はどこまで信じられるでしょうか。名乗りだけでは信頼になりません。

信頼は平時に積むしかありません。災害の前から定期的に発信を続けていること、一定数のフォロワーがいること、できれば認証バッジがついていること、病院のウェブサイト本体からリンクが張られていること。このあたりが揃っていて、ようやく「これは本物の公式だ」と判断してもらえます。

フォロワーの数だけを追いかけるのも違うと思います。自分の医療圏にいない人にいくらフォローされても、災害時に届けたい相手には届きません。話題性のある投稿で数字を伸ばすことはできますが、それで増えるのは全国の見物客です。地元の人に読まれて信頼される発信を地道に続けるほうが、いざというときの到達率では効いてきます。親しみを演出しようとしておちゃらけた投稿を重ねる運用も見かけますが、災害時の信頼という観点ではむしろ足を引っ張るように思います。

必要なフォロワー数に一律の目安はありません。医療圏の人口も、施設が担う役割も違うからです。目標を置くなら、全国の平均値を見るのではなく、自院の診療圏に何人住んでいて、そのうち何割に届けば足りるのかから逆算するほうが実用的だと思います。

公式アカウントはデマへの対抗手段にもなる

大きな災害が起きると、真偽の分からない投稿が必ず出てきます。承認欲求から作られた話が、緊急性の高い情報の顔をして広まっていきます。10年前の熊本地震のときに流れたその種の投稿は、今も消されずに残っています。一度出回った情報は、あとから誤りだと分かっても回収されません。

こうしたときに、発信力のある公式アカウントを持っているかどうかで打てる手が変わります。フォロワーを抱えた公式が「その情報は誤りです」と出せば、少なくとも自院に関する話については訂正が届きます。持っていなければ、誰かが気づいて訂正してくれるのを待つことになります。自前の対抗力を備えておくという意味でも、平時の運用には値打ちがあります。

平時の地味な投稿が公式アカウントを強くし、緊急時の備えになる

災害時の情報発信は、その日に何をするかよりも、それまでに何を積んでいたかで決まる部分が大きいと思います。玄関の貼り紙は、書いた瞬間から病院の敷地の外には出ていきません。それを外に出す回路を持っているかどうかは、地震が起きてから決められることではありません。

平時の投稿は地味です。外来担当医の変更、駐車場の工事、健診の案内。読まれている手応えも薄いだろうと思います。ただ、その積み重ねだけがフォロワーという到達力になって、必要なときに一度だけ大きく効きます。

自分の施設の公式アカウントのフォロワー数と、その人たちが近隣の住民かどうかは、今日のうちに確かめられます。

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*1 済生会熊本病院 Facebook投稿 https://www.facebook.com/share/p/1AUM3ae9QH/?mibextid=wwXIfr

更新日:2026-07-29 閲覧数:47 views.