レ点腫瘍学ノート

Top日記2026年7月28日

FoundationOne CDxの結果返却が爆速になった話

FoundationOne がん遺伝子パネル検査 がんゲノム バイオマーカー

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2026年7月17日付で、SRL(エスアールエル)がFoundationOne CDxがんゲノムプロファイル検査の所要日数表記を書き換えていました。検査案内に載っていた「16〜19日」が「9〜15日」に短縮されています*1。理由は、測定委託先であるFoundation Medicine Inc.の測定場所の移転などに伴う検査工程の効率化とされています。

月曜提出、ケモ1コース以内で結果説明

最近の実感としても、月曜日に検体を提出すると翌週には結果が返ってきて、翌々週にエキスパートパネルが開催できます。順調にいけば提出から3週間後の診察で、患者さんに結果を説明できてしまう計算です。これまで検体を提出したあとは、いったんパネル検査のことを頭の外に置いて次の治療コースを回していましたが、最近はそのケモ1コースの間に決着がついてしまうことが増えました。エキスパートパネルの日程を組むにも、患者さんに結果説明の予約を入れるにも、これまでは1ヶ月近いバッファを見込んでおくのが普通だったので、この変化は大きいです。

なぜ短縮されたのか

SRLの通知が理由として挙げているのは「測定委託先であるFoundation Medicine Inc.の測定場所の移転などに伴う検査工程の効率化」で、具体的にどんな工程がどう変わったのかまでは書かれていません。SNS上ではシーケンサーがHiSeq 4000系からNovaSeq系へ更新されたという話も流れていましたが*2、これは公式には確認できていません。

米国内から直接オーダーした場合はさらに速く、Foundation Medicineの公式サイトによるとレポート発行までのTATは最短5日、中央値でも6〜7日とされています*3。日本から検体を送付する場合はこの数字がそのまま当てはまるわけではありませんが、検査会社側の処理能力自体が底上げされていることは間違いなさそうです。

JCO Oncology Practice誌の裏付け

PURPOSE Given the importance of timely comprehensive genomic profiling (CGP) for the treatment of cancer, this study aimed to provide generalizable estimates o…
https://ascopubs.org/doi/10.1200/OP-25-01191

検査会社のTATとはSRLの9〜15日は検体を受け取ってから結果を報告するまでの所要日数を指すのが通例で、ぼくが体感している3週間はそこにエキスパートパネルの開催と診察の予約までを足した期間です。ちょうど同じタイミングで、検体採取から結果報告までのより広い窓を扱った論文がJCO Oncology Practice誌に掲載されていました*4。2018年から2024年にかけてFoundation Medicine社で解析された固形腫瘍検体27万1574例、5497の臨床施設のデータをまとめたもので、全体のTAT(検体採取から結果報告まで)の中央値は2018年の43日から2024年には32日へ縮んでいます。SRLの検査案内が対象にしている窓よりも広い分、数字自体は大きく見えますが、傾向としては同じ方向を向いています。

この論文でとくに目を引くのは、施設間の差です。2024年時点でTATが最も短い上位20%の施設は中央値23.1日である一方、最も長い下位20%の施設は46.5日と、同じ年でも施設間で倍以上の開きが残っています。この差を生んでいるのは検査会社側のシーケンス処理速度ではなく、生検から検査オーダーまでの院内プロセスでした。最短の施設群では生検からオーダーまで中央値10.0日なのに対して、最も遅い施設群では30.8日かかっています。検査そのものはとっくに速くなっていたのに、律速段階は現場の側に残っていたことになります。

日本に検査施設がないという構造

FoundationOne CDxの検査施設は、Foundation Medicine直営が米国に2箇所(ボストンとノースカロライナ)、欧州にミュンヘンが1箇所あり、ほかに中国とフランスに技術提供を受けた提携ラボがあります。日本国内には検査施設がなく、検体は海外へ送られて解析されています。もし中外製薬がFoundation Medicineのラボを国内に設置していたら、アジア圏のゲノム検査拠点として研究者も集まり、C-CATに蓄積された十数万人分の遺伝情報や、検査費用として海外へ流出している医療費の一部も国内にとどめられたかもしれません。

現場に残っている律速段階

JCO Oncology Practice誌の論文が示していたのは、TATの主な律速因子が検査会社の処理速度から、生検してからオーダーするまでの院内プロセスに移ってきているという構図です。大規模施設ほど出検が早い理由としては、オーダー手順が定型化されていること、担当者が明確であること、臨床と病理部門の連携が構築されていること、検査会社との事務手続きに習熟していること、適応判断や同意取得がルーチン化されていることなどが考えられます。

出検待ちを短縮する具体策としては、診断確定時点で主治医を待たずに自動的に遺伝子検査がトリガーされるreflex testing、主治医ではなく病理医が遺伝子検査の適応を決めるpathologist-initiated testing、病理検体搬送の自動化などが挙げられています。検査自体がここまで速くなった以上、次に詰めるべきは病理診断が確定してからパネル検査をオーダーするまでの院内の動線ということになります。ここは施設ごとの運用次第で、まだ短縮の余地が大きい部分だと思います。

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*1 所要日数変更のお知らせ, SRL NEWS 2026-044, 2026年7月 https://www.srl-group.co.jp/assets/pdf/news/testing/2026-044.pdf
*2 FoundationOne CDxのシーケンサー更新に関する投稿, X(@m0370) 2026年 https://x.com/m0370/status/2081996964921774207
*3 Ordering and Logistics, Foundation Medicine https://www.foundationmedicine.com/providers/ordering-and-logistics
*4 Fox AH, et al. Turnaround Time of Comprehensive Genomic Profiling in Lung Cancer and Other Solid Tumors. JCO Oncol Pract. 2026. https://doi.org/10.1200/OP-25-01191

更新日:2026-07-28 閲覧数:14 views.