レ点腫瘍学ノート

Top日記2026年7月9日

学会広報にX・Instagram・Facebookのどれを使うべきか問題

SNS 広報 学会 JSMO ASCO

298b090c4b.png

学会の広報にSNSをどう使うかは、以前から個人的に興味を持って追いかけているテーマです。学会の広報担当者と話していると「XとInstagramとFacebook、結局どれをやればいいんですか」という質問に出会うかもしれません。答えは「全部に意味があるが、それぞれ役割が違う」としか言えないのですが、その違いをきちんと整理する機会がなかったので、この記事で一度まとめておきます。

三つのSNSはどれも「情報を発信する」という点では同じに見えますが、即時性、拡散の仕組み、そして届く相手がまったく異なります。

Xの強みは即時性とハッシュタグでの話題集約

Xの最大の強みは、投稿がタイムラインに流れるまでの時間差がほとんどないことです。たとえば学術集会のシンポジウムが9時に始まるとすれば、8時50分に予約投稿しておけば、ほぼその時刻通りに予告がタイムラインに流れます。これはInstagramやFacebookのように配信アルゴリズムがエンゲージメントを見てから投稿を出し分ける仕組みとは対照的で、Xでは投稿した時刻と読者に届く時刻がほぼ一致します。

文字情報が主体であることも、Xが検索に強い理由になっています。同じ話題を追いかける人たちはハッシュタグでつながることができ、このリアルタイム性とハッシュタグ検索が組み合わさることで、学会場にいなくてもその瞬間の議論に加われるという体験が生まれます。

今年のASCO26では、膵癌に対する新規panRAS阻害薬ダラクソンラシブの発表があった瞬間に、現地の医師たちがスライド付きの投稿を大量に流し、Xのタイムラインがその話題で埋め尽くされました。詳しい経緯は以前の記事ASCO26とSNSが一体化した学会運営についてに書きましたが、OncoAlertの集計によればASCO26の6日間で医療従事者によるASCO関連投稿は19,300件、閲覧数は3.5億回に達したとのことです。*1

一方でXには弱みもあります。文字と画像のバランスでいえば見た目のインパクトはInstagramに劣りますし、拡散の起点はあくまで「その話題にすでに関心を持っている人」で、無関係な層に偶然届くという浸透力はそれほど強くありません。誤情報や過激な意見も同じ速度で拡散されるため、学会公式アカウントとしては投稿内容のチェック体制も必要になります。

Instagramの強みは画像のインパクトと友人経由の拡散力

Instagramの強みは、文字より先に画像や動画そのものがメッセージになる点です。学会の雰囲気や登壇者の表情、会場の熱気は、テキストで説明するよりも一枚の写真のほうが早く伝わります。動画も比較的扱いやすいため、講演のダイジェストやショート動画といったコンテンツとも相性がよいプラットフォームです。

もう一つの強みが、フォロー関係を超えて広がっていく浸透力です。友人が見ている投稿が自分のフィードにも流れてくるというアルゴリズムの性質があるため、たとえば医学生の一人が腫瘍内科に興味を持ってJSMOのアカウントをフォローすると、その投稿が同学年の友人たちのフィードにも徐々に現れるようになります。学会が意図して広告を打たなくても、学生同士のつながりを伝って認知が広がっていくわけです。

ただしInstagramは画像と動画が中心である分、制作のハードルが高いという弱みを抱えています。テキストだけで済むXと違い、写真の選定や動画編集、キャプションのデザインまで手をかける必要があり、学会の広報担当者だけで継続的に運用するのは簡単ではありません。この負荷の高さから、Instagram運用を外部の制作業者に委託する学会も出てきています。ただ委託先にどこまで予算を割けるかという問題もあり、自前でやるべきか業者に頼るべきかは学会ごとに悩ましいところだろうと思います。

Facebookは文字主体だがアルゴリズムはInstagramに近い

Facebookは文字情報が主体である点でXに近く見えますが、配信アルゴリズムの設計思想はInstagramに近いところがあります。友人や関心のあるページの投稿が優先的に表示される仕組みのため、同じ話題について書き込む人が集まれば、Xほどではないにせよ即時性のある盛り上がりが生まれることがあります。

一方で、Facebookのユーザー層は年々高齢化しており、学会が届けたい若手医師や医学生の層には以前ほど強く届かなくなっています。学会公式アカウントの投稿がフォロワーの目に触れる頻度も、以前より下がっている印象です。

学会としてどう使い分けるか

三つのSNSを比べてみると、それぞれ得意な役割がはっきり分かれていることが分かります。学術集会のセッションをリアルタイムで中継し、議論を呼び込みたいならXが向いていますし、学生や若手医師層に学会の存在を知ってもらいたいならInstagramの浸透力が効いてきます。Facebookは新規の獲得というより、すでにつながりのある中堅以上の医師層に情報を届け続ける用途で使うのが現実的です。

学会はこの三つを一つの答えに絞る必要はなく、目的に応じて使い分ければいいはずです。ぼく自身はどちらかといえばXでの発信を追いかけることが多いのですが、Instagramの投稿を眺めていると、テキストでは伝えられない熱量があることも実感します。すべてを完璧に運用するのは学会の限られたリソースでは難しく、どこに力を注ぐかを決めること自体が広報戦略なのだと思います。

この記事に対するコメント

このページには、まだコメントはありません。

お名前:



*1 OncoAlert (@OncoAlert) https://x.com/OncoAlert/status/2061798969844375641

更新日:2026-07-09 閲覧数:6 views.