がん領域の承認がまとめて出た日のメモ
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2026年6月19日は、がん領域だけで承認や適応拡大がいくつも重なった日でした。気づいた範囲の要点を並べておきます。
- 胃癌周術期のデュルバルマブ、いよいよD-FLOT
- IDH1変異陽性胆道癌にイボシデニブ
- 経口SERDカミゼストラントが乳癌で承認
- チスレリズマブも胃癌に
- 神経線維腫症2型にベバシズマブ、世界初
- 一日でこれだけ、という話
胃癌周術期のデュルバルマブ、いよいよD-FLOT
- デュルバルマブが胃癌の周術期で承認*1
- MATTERHORN試験に基づく。対象は根治切除可能な胃癌・胃食道接合部腺癌
- 同日、日本胃癌学会ガイドライン委員会がstage II〜IVaまでをD-FLOTで「推奨」とコメント*2
- 添付文書は併用相手を5-FU・ロイコボリン・オキサリプラチン・ドセタキセル(FLOT)と指定*3
- 回数も術前2回・術後2回・単剤維持10回と明記
- 胃癌の診断群分類番号060020xx9900xxにデュルバルマブの枝はまだ立たず、五号告示別表にも見当たらない*4
- デュルバルマブ1500mgは1バイアル84万円ほど
- 厚生労働省の課長通知には「臨床病期IIA及びIIBの患者に投与する場合は、その必要性を慎重に判断すること」との記載があるため、ステージIIの術前後に使用する場合には症状詳記などを求められる可能性もある*5
オペ室の都合や合併症で術前3回・術後1回などに勝手に組み替えると、レセプトで弾かれかねません。DPCの枝が立たないまま入院でD-FLOTを回すと、包括の中ではとんでもない持ち出しです。また、ステージIIの場合は症状詳記にて必要性を説明しなければいけないようにも読み取れますが、その点がどう整理されるのか、今は何とも言えません。
IDH1変異陽性胆道癌にイボシデニブ
- IDH1阻害薬のイボシデニブが「がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌」に承認*6
- 製造販売元は日本セルヴィエ
- 変異型IDH1を選択的に阻害し、2-ヒドロキシグルタル酸の産生を抑える薬
- もとはIDH1変異陽性の急性骨髄性白血病で承認されていた
- 胆道癌はこの数年でHER2、FGFR2、BRAF、IDH1と標的が一気に増えた領域
- コンパニオン診断のオンコマインDxTTは、3週間ほど前にすでに保険適用*7
困るのは検体です。胆管癌は採れる組織が小さく、術後再発でもない限り、HER2の免疫染色とオンコマインとがん遺伝子パネル検査の全部に検体を回すのはまず無理です。標的が増えるたびに、限られた組織をどの順番でどう配分するかという問題が一段ずつ重くなります。
経口SERDカミゼストラントが乳癌で承認
- アストラゼネカの経口SERD、カミゼストラントが「エトカマ錠75mg」の販売名で承認*8
- 効能・効果は「内分泌療法中にESR1遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」
- SERENA-6試験に対応した適応で、増悪する前にスイッチする設計
- SERENA-6はアロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を6か月以上続けた時点から、ESR1変異をリキッドバイオプシーで定期測定し、検出したらカミゼストラントへ切り替え*9
- コンパニオン診断はGuardant360 CDxが承認済み
- 先行していたリリーのイムルネストラントは薬価で難航中
エトカマという響きには、なんとなくチーカマやカニカマのようなおつまみ感があり、あまりセンスを感じないネーミングです。それより気になるのは適応症のほうで、「疾患進行が認められない」段階でESR1変異を捕まえる検査をどう回すかが曲者です。先進医療Aの枠でやるか、病院が赤字リスクを背負ってGuardant360 CDxを回すか、という程度の現実になります。内分泌療法中のESR1変異を繰り返しリキッドで監視する検査が、日本の保険診療で素直に通るのか。大腸癌のRAS/BRAF複数回測定は抗EGFR抗体を「やめる」ための検査で、乳癌のESR1監視は経口SERDを「始める」ための検査です。方向が真逆なものに同じ理屈が通るのかは、まだ読めません。
チスレリズマブも胃癌に
- チスレリズマブが同じ日に胃癌の適応を取得*10
- 会社サイトには告知がなく、PMDAの添付文書だけが6月19日付で改訂
- 製造販売元はビーワン・メディシンズ
- ペムブロリズマブと同じくCAPOXやFPとの併用
- 最適使用推進ガイドラインも同日公開*11
- TAP 10以上では上乗せが明瞭、TAP 5未満や5〜10では全生存期間が対照群とほぼ重なる
- 添付文書にコンパニオン診断を縛る一文はなし
文面しだいでは、CPSに代わってTAPスコアが日本に根づく試金石になったはずでした。実際の運用がどう転ぶかは、始まってから見るしかありません。
神経線維腫症2型にベバシズマブ、世界初
- ベバシズマブが神経線維腫症2型に承認*12
- 中外製薬によれば、この疾患で承認された治療薬は世界初
- 医師主導の国内第II相試験(BeatNF2試験)に基づく
- 用法は1回5mg/kgを2週間隔で点滴
中外がこういう承認を取りに行く姿勢は、毎回いいなと思います。胞巣状軟部肉腫にアテゾリズマブを取ったときも同じことを感じました。経営にはほとんど効かないであろうニッチな領域で、ちゃんと医師主導試験を回して世界初の適応まで持っていく。なかなかできることではありません。
一日でこれだけ、という話
一日でこれだけ並ぶと、追いかけるほうもなかなかです。ぼくはオタク気質なのでむしろ燃えますが、外来も病棟も内視鏡も当直もこなしながら片手間で全部キャッチアップして化学療法を回すのは、正直しんどいだろうと思います。しかも承認が出た瞬間に動かせるわけでもない。コンパニオン診断のタイミング、添付文書の回数の縛り、DPCの枝、リキッド検査が保険で通るか。承認から現場で安全に算定できるまでには、まだいくつも段差が残っています。
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*1 アストラゼネカ プレスリリース 2026年6月19日 https://www.astrazeneca.co.jp/news/press-releases1/2026/202606191.html
*2 日本胃癌学会 お知らせ 2026年6月19日 https://www.jgca.jp/news/202606191774/
*3 イミフィンジ点滴静注 添付文書 PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/4291443A1023_1?user=1
*4 DPC 060020xx9900xx https://bone.jp/dpc/26/060020xx9900xx.html
*5 抗PD-1抗体抗悪性腫瘍剤及び抗PD-L1抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項の一部改正について https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001713732.pdf
*6 イボシデニブのIDH1変異陽性胆道癌への適応拡大 がんナビ https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202507/589381.html
*7 サーモフィッシャー プレスリリース 2026年6月1日 https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/about-us/news-gallery/release/2026/pr060126.html
*8 エトカマ錠75mg 医薬品情報 PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/42910J6
*9 Camizestrant in ER+/HER2- breast cancer 関連文献 https://www.tandfonline.com/doi/10.2217/fon-2022-1196
*10 テビムブラ点滴静注 添付文書 PMDA https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdDetail/iyaku/4291478A1027_1?user=1
*11 最適使用推進ガイドライン(チスレリズマブ・胃癌)PMDA https://www.pmda.go.jp/files/000281154.pdf
*12 中外製薬 ニュースリリース 2026年6月19日 https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20260619153001_1591.html
更新日:2026-06-19 閲覧数:15 views.