レ点腫瘍学ノート
Topがんゲノム遺伝子別

BRCA1・BRCA2遺伝子変異

がんゲノム

がん遺伝子パネル検査などで検出されるBRCA1・BRCA2遺伝子異常と治療に関する個人的なメモです。がんゲノム/遺伝子別のBRCA1/BRCA2の項目を独立させたページで、随時追記しています。正確な内容になるよう注意はしていますが誤っている可能性や古い情報であることもあるので、常にご自身で正確かつ最新の情報で検証するようにしてください

HRD遺伝子の1つ。HRD遺伝子にはBRCA1/BRCA2のほかに、CHEK2、ATM、CDK12、PPP2R2Aなどがある。

BRCA1/BRCA2の以上に対してはPARP阻害剤オラパリブが良い適応で、乳癌(アンスラサイクリン・タキサン既治療でgBRCA異常あり)または卵巣癌(プラチナ感受性またはgBRCA異常あり)ではすでに保険適用されている。前立腺癌や膵癌での承認も期待されている。また2020年9月に卵巣癌に対してニラパリブも承認された。PARP阻害剤が保険適用でない臓器の場合は同じく相同組み換え修復異常を標的とするプラチナ系抗腫瘍薬も候補になる。

reversion変異 - レ点腫瘍学ノート
reversion変異(復帰変異)とは 主に薬剤の奏効因子となる遺伝子変異(PARP阻害剤に対応するBRCA機能欠失など)に対して、さらに二次変異が生じてその機能を回復し、それによって治療薬耐性を生じることなどをreversion変異と呼びます。復帰変異とも呼ばれます。BRCA関連腫瘍に対するPARP阻害剤の耐性 父母から受け

BRCA1/BRCA2の変異の中でも変異の種類や部位によりPARP阻害薬への感受性は異なることが知られている*1。たとえば、この報告ではオラパリブの全体のHRが0.25である中で、nonsense変異はHR 0.43に対してframeshiftは0.21でmissenseは0.04と大幅に治療効果が高い。一方でsplicing siteではHR 1.03とPARP阻害薬の有効性はあまり期待できなさそうな値となっている(ただし本検討でのsplicing siteの症例数は少ない)。また変異の部位ではBRCA1の場合はRINGドメインやBRITドメインでの有効性が高く、BRCA1 DNA-BDドメインの場合は有効性が乏しい。BRCA2の場合はRAD51-BDで有効性が高い。特にBRCA1の中のBRCTドメインに属するBRCA1 A1708E変異とBRCA1 G1706E変異がある場合は極めてオラパリブの有効性が高いことが知られている*2。

BRCA異常は特に若年乳癌・若年膵癌などで変異が見られる頻度が高い遺伝子異常だが、gBRCA膵癌に対するPOLO試験の検討からgBRCAがある患者に対するオラパリブは年齢によらず高齢でも有効性があることが示唆されている*3。

変異やframeshiftが主でClinVarでデータベースが数多く収載されている。ミリアドはBRCAにhg38(GRCh38)とは異なる塩基番号を振っているため、BRACAnalysisとパネル検査のBRCA1変異塩基番号はずれていることに注意が必要(BRCA2はこの問題はない)。※最近この問題は解決された? 2022/9

プラチナ感受性との関連

プラチナ系抗腫瘍薬とPARP阻害剤の感受性は連動していることが多く、PARP阻害剤を使用する場合はプラチナ系抗腫瘍薬に抵抗性になる前に治療開始することが望ましい。膵癌や卵巣癌ではプラチナ系抗腫瘍薬の治療歴があり感受性を認めた患者のみを対象とした治療開発が主であるが、前立腺癌や乳癌は必ずしもこの通りではない。

卵巣癌においてはプラチナを含む3レジメン以上の化学療法を受けた症例に関しても奏効率30%、DoR 8ヶ月という成績を示した報告*4、*5もあり、特にgermline BRCA変異の場合はプラチナ化学療法でPDとなってもPARP阻害剤が有用なケースは一部には見られると考えられている。卵巣癌などではプラチナ不応・耐性の腫瘍に対する新規PARP1阻害剤の臨床試験なども実施されている。たとえばプラチナ既治療不応例を70%程度エントリーしたPETRA試験*6などがそれにあたり、今後はそれらの報告が相次ぐと考えられている。

BRCAの融合遺伝子(fusion)や染色体再構成(rearrangement・truncation)

まれながらBRCAと他のfusionが報告されているとのことだが、BRCA fusionに対する治療は報告が極めて少ない。また、極めて報告数が少ない変異のためBRACAnalysisやMyCoiseではVUSと判断されることが少なくないようである。

二次的所見(HBOC:遺伝性乳癌卵巣癌症候群)

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の原因遺伝子。特に、若年乳癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌などに関与する。これらの家族歴をよく聴取することが重要となる。二次的所見が疑われる場合は積極的に遺伝カウンセリングを考慮する。小杉班リスト20191210では開示推奨度は最上級のAAAであり、germline test推奨度も◎。なお、予防的子宮付属器切除が保険適用となる(2020〜)。

乳癌

タキサン・アンスラサイクリンの治療歴がある場合はBRCAnalysisが保険適用で実施可能であり、病的変異を認めればオラパリブが保険診療で実施可能。

germline BRCA変異を有するTNBCに対するベリパリブがBROCADE3試験のサブ解析でPFS延長を示した*7。

プラチナ感受性卵巣癌

プラチナ感受性卵巣癌については保険診療であり標準治療。

なお、プラチナ抵抗性卵巣癌であってもgermline BRCA変異があればある程度の感受性があるとの報告がある*8。従来はプラチナ抵抗性卵巣癌の後治療化学療法は奏効率15%程度であるとされているのに対してオラパリブは30%程度あると考えられている。

膵癌

PARP inhibitors in pancreatic cancer: molecular mechanisms and clinical applications(レビュー2020年3月)
https://molecular-cancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12943-020-01167-9

前立腺癌

BRCA1/2・ATM・FANC family・CHEK2を含むDNA修復異常についてはPARP阻害剤が候補。第2相試験で有望な結果あり*9。

米国ではBRCA1/2変異を有する進行前立腺癌に対してルカパリブが迅速承認された*10。単群試験TRITON2試験の結果に基づくもの。迅速承認時点での奏効率は44%、奏効期間は未到達。

またBRCA1/2またはHRD陽性の去勢抵抗性前立腺癌ではルカパリブ+ニボルマブの併用療法の有効性がESMO2021で発表され、今後は免疫チェックポイント阻害剤も併用されるようになる可能性がある*11。

胆道癌

胆道癌は比較的BRCA1/BRCA2の病的変異が検出されやすい腫瘍で、またPARP阻害剤の有用性が期待される腫瘍であるが、確立された治療にはなっていない*12。2024/3

大腸癌

ベリパリブ+テモゾロミドの第2相試験
オラパリブの第2相 Oncologist

gBRCAとsBRCAで奏効率に差があるか

前立腺癌に対するルカパリブ第2相試験(TRITON2試験*13)の結果ではgBRCAとsBRCAの間で奏効率に差は見られなかった。

PARP阻害剤の放射線増感作用

BRCA変異を有する有さないに関わらず、PARP阻害剤は1本鎖DNA切断を生じた細胞に対する細胞死誘導の効果があるため放射線治療の増感作用があると考えられ、これに関する臨床試験が頭頚部癌などで行われている*14。

関連ページ

ほかの遺伝子についてはがんゲノム/遺伝子別を参照。



*1 ESMO Open 2025 https://www.esmoopen.com/article/S2059-7029(25)00402-8/fulltext
*2 https://academic.oup.com/hmg/article/25/24/5287/2580710
*3 WCGC2020 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202007/566265.html
*4 Gynecol Oncol https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26723501/
*5 Clin Cancer Res https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26187614/
*6 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04644068
*7 ESMO breast 2020. https://oncologypro.esmo.org/meeting-resources/esmo-2019-congress/Phase-3-study-of-veliparib-with-carboplatin-and-paclitaxel-in-HER2-negative-advanced-metastatic-gBRCA-associated-breast-cancer
*8 ESMO2019
*9 NEJM 2015 1697-1708 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1506859
*10 https://www.fda.gov/drugs/fda-grants-accelerated-approval-rucaparib-brca-mutated-metastatic-castration-resistant-prostate
*11 https://www.cancernetwork.com/view/clinical-efficacy-of-nivolumab-plus-rucaparib-revealed-in-mcrpc-subgroup
*12 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7555445/
*13 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32795228/
*14 https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02229656

更新日:2026-11-06 閲覧数:6 views.