レ点腫瘍学ノート
Topがんゲノム遺伝子別

BRAF遺伝子変異

がんゲノム

がん遺伝子パネル検査などで検出されるBRAF遺伝子異常と治療に関する個人的なメモです。がんゲノム/遺伝子別のBRAFの項目を独立させたページで、随時追記しています。正確な内容になるよう注意はしていますが誤っている可能性や古い情報であることもあるので、常にご自身で正確かつ最新の情報で検証するようにしてください

BRAF遺伝子異常はclass I〜IIIおよびその他の分類不能に分ける考え方が一般的である*1。この分け方についてはCancer Discovのレビューがよくまとまっており分かりやすい*2。また病的意義をどの程度有するかはClinVarなどの情報も参考となる。

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造血器腫瘍パネル検査(ヘムサイト)のFast-Track対象遺伝子である。2025/4

参考文献

BRAF V600E

BRAF遺伝子変異でがん遺伝子として機能するものの多くはBRAF V600E変異である。大腸癌ではSSAP由来の大腸癌でBRAF V600E変異の頻度が高い。悪性リンパ腫ではhairly cell leukemiaではほぼ全例でBRAF V600E変異が陽性であることが知られている。

V600K、その他のV600の変異

悪性黒色腫ではBRAF V600EとV600Kについては同等にBRAF阻害剤とMEK阻害剤の治療が標準治療と考えられる。またNCCNガイドラインではV600に起こった変異であれば(V600EやV600Kに限定せず)BRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用療法を推奨している。

V600以外のBRAF変異

V600E以外のBRAF変異やfusionはclass IIまたはclass IIIの異常とされBRAF阻害剤の有効性は期待しにくい。NCI-MATCHのBRAF non-V600変異コホートではトラメチニブ単剤は奏効例は1/32例にとどまりネガティブとの結果であった*14。この試験ではclassIIは13例、classIIIは19例含まれておりclassIIの方がPFS・OSともに良い傾向にあったが有意な差は無かった。→BRAF classIIIの欄を参照

一方で悪性黒色腫ではトラメチニブなどのMEK阻害剤は候補となる可能性がある*15が、NCI-MATCHの結果では32例中1例しか奏効率が見られず効果は思わしくなかった*16。他にもトラメチニブやコビメチニブなどのMEK阻害剤の有効性に関する報告が散見される*17。

悪性黒色腫ではV600E以外のBRAF変異に対するBRAF阻害剤+MEK阻害剤の報告もあり、V600E以外の希少なBRAF変異にもある程度の有効性があるとの報告もある*18*19。ただし、もともとV600E以外のBRAF変異は予後が良い傾向がある*20ので解釈には注意が必要である。

大腸癌では、class I〜IIIの全てにおいてBRAF阻害剤やMEK阻害剤での治療を行う場合には上流シグナルであるEGFRを遮断する抗EGFR抗体を併用するのが標準的と考えられるが、抗class II変異にはBRAF阻害剤抵抗性だがMEK阻害剤が有効なため抗EGFR抗体+MEK阻害剤の併用療法が有効との報告もある*21*22。

大腸癌ではV600の10分の1くらいの頻度で594か596の変異があり、V600Eは「右側結腸・高齢・MSI・治療抵抗性・予後不良」な因子であるのに対して594と596はいずれも「直腸・MSS・予後良好」な因子とされる*23。

保険適用についてはベムラフェニブやダブラフェニブなどは添付文書上は「BRAF遺伝子変異を有する〜」としか書かれていないため、V600E以外でも臓器が悪性黒色腫や大腸癌などであれば保険適用での投与が可能と思われる。

classIII BRAF変異

classIIIのBRAF変異は病的意義がないため、治療標的とはならないと考えられる。

前述のNCI-MATCHのnon-V600変異陽性コホートに対するトラメチニブの第2相試験の唯一の奏効例はclassIII変異陽性(BRAF G469E)であったがこの症例はNF1不活化変異と同時に変異が生じており、また別のlong SDとなった症例もclassIII変異陽性(D594G)であったがこの症例もRASとNF1の変異も同時に存在していた。このためBRAF classIII変異に対するMEK阻害剤の有効性はBRAF変異のみで決めることは難しく、classIII変異はRASやNF1など他の遺伝子変異、またはpERK経路の活性化亢進と同時に存在することで治療に対する反応性が変動することが示唆されている*24。

BRAF 融合遺伝子(fusion)

BRAF fusionもBRAF阻害剤の有効性が期待しにくいBRAF異常であるがclass IIに分類されるものが多いと考えられる。しかしfusionの相手先が非コーディング領域であるなど機能喪失型のfusionと考えられる場合には、そのBRAFを薬剤で阻害しても抗腫瘍効果が期待できないため、治療対象とならない。治療標的であるための必要な条件は幾つかあるが、FoundationOne CDxのレポートで読み取れる範囲で判明する最低条件としてXMLファイルに記載されたin-frameがYESであることや遺伝子の活性ドメインを含む結合であることなどが挙げられる。

BRAF融合遺伝子に対してはBRAF阻害剤+MEK阻害剤の有効性のエビデンスは少数のみある。報告としてはKIAA1549-BRAFのfusionが多いが、fusionの相手となる遺伝子は多岐にわたる*25。BRAF活性化につながる病的意義があると判断されればMEK阻害剤が単剤で有効との報告はある。

現在、BRAF融合遺伝子陽性のいくつかの臓器の腫瘍に対してMEK阻害薬ビニメチニブの第2相試験が国内で進行中である。2025/9
https://oncolo.jp/ct/ad0117

BRAF増幅

BRAF V600E変異に対するBRAF阻害剤+MET阻害剤による治療を行っている課程で出現する耐性変異としてBRAF増幅が見られることがしばしばある。ここから考えてもBRAF増幅に対するBRAF阻害剤は推奨されにくい。

BRAF indel(挿入/欠失)

BRAFのindelは部位により判断が異なるが活性化に影響しうる場合はBRAF classII変異と考えられ、BRAF阻害剤+MEK阻害剤の併用療法が対象となると考えられる。

中でもN486-P490の欠失を持つ膵癌に対してBRAF阻害剤ダブラフェニブが著効したとの報告*26があり、また他の癌腫でも同領域の変異に関するMEK阻害剤トラメチニブの有効報告*27がある。またBRAF阻害剤の有効性に関する有効性を検討した報告がある*28。K57_G61の欠失についても報告*29がある。

関連ページ

ほかの遺伝子についてはがんゲノム/遺伝子別を参照。



*1 Nature 2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28783719/
*2 https://cancerdiscovery.aacrjournals.org/content/9/3/329.full-text.pdf
*3 NEJM 2019 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1908075
*4 Nat Med 2023 https://www.nature.com/articles/s41591-023-02321-8
*5 Lancet Oncol. https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(20)30321-1/fulltext
*6 JTO 2021 https://www.jto.org/article/S1556-0864(21)02403-5/fulltext
*7 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 2020 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/37/2/37_110/_html/-char/ja
*8 JCO 2018 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29072975/
*9 NEJM 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2303815
*10 https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(19)45234-4/fulltext
*11 JCO 2023 https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.01000
*12 Cancer Cell 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32289278/
*13 Cancer Cell 2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28966033/
*14 Clin Cancer Res 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31924734/
*15 The Oncologist 2021 https://theoncologist.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/onco.13795
*16 Clin Cancer Res 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31924734/
*17 Oncotarget 2020 https://www.oncotarget.com/article/27788/text/
*18 https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.19.00489
*19 JCOPO 2022 https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/PO.22.00075
*20 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28927118
*21 Oncogene 2018;37:1775-87.
*22 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33842313/
*23 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26153495
*24 Clin Cancer Res 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31924734/
*25 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5049644/
*26 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31519698/
*27 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32991018/
*28 JCOPO https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8407652/
*29 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32991018/

更新日:2026-11-06 閲覧数:7 views.