レ点腫瘍学ノート
Topがんゲノム遺伝子別

MET遺伝子異常

がんゲノム

がん遺伝子パネル検査などで検出されるMET遺伝子異常と治療に関する個人的なメモです。がんゲノム/遺伝子別のMETの項目を独立させたページで、随時追記しています。正確な内容になるよう注意はしていますが誤っている可能性や古い情報であることもあるので、常にご自身で正確かつ最新の情報で検証するようにしてください

METの異常は「MET増幅」と「METエクソン14スキッピング変異」を明確に区別して考える必要がある。特に後者はコンパニオン診断に基づく標的治療が実用化されている。

MET依存性腫瘍に関するレビュー(2020.6)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32514147/

METエクソン14スキッピング変異(METΔex14)

METエクソン14スキッピング変異は検査法により感度の乖離があることが知られており、特にオンコマインとテポチニブのコンパニオン診断検査であるArcherMETでは最大30%の結果の乖離があることが知られている*1。ただしArcherMETは2023年2月に販売が中止され、オンコマインがコンパニオン診断検査として使われている。

2023年11月時点で、カプマチニブのコンパニオン診断薬としてはオンコマインDx、AmoyDx、FoundationOne CDx、FoundationOne Liquid CDxが承認されている。
グマロンチニブのコンパニオン診断薬としてAmoyDxが承認されている。
テポチニブのコンパニオン診断薬としてオンコマインDx、AmoyDx、肺がんコンパクトパネルDxが承認されている。
コンパニオン診断薬の適応については随時PMDAの「医薬品の適応判定を目的として承認された体外診断用医薬品又は医療機器の情報」を確認すること。2024年11月版はこちら。

クリゾチニブ

METΔex14変異を有する非小細胞肺癌に対するクリゾチニブの有用性が報告されている*2。第2相試験が進行中*3。

Y1230C(耐性変異)

METΔex14の非小細胞肺癌に対するクリゾチニブの耐性を生じる変異としてMET Y1230Cの報告がある*4。

MET阻害剤(テポチニブ、カプマチニブ)

METΔex14変異を有する非小細胞肺癌に対しては、日本ではテポチニブ、米国ではカプマチニブが承認されている*5。

カプマチニブ

米国で承認されたカプマチニブは脳転移を有するMETエクソン14スキッピング変異陽性非小細胞肺癌に対してはGEOMETRY mono-1試験(第2相)で有効性が示唆されている*6。2020年7月からカプマチニブも本邦でMETエクソン14スキッピング変異陽性非小細胞肺癌に対して承認された*7。

カプマチニブ投与前のMETΔex14変異の判定のためのコンパニオン診断薬はFDAおよび日本で共にFoundationOne CDxが承認されている*8。

なお、テポチニブもカプマチニブもMET阻害剤のエビデンスは「EGFR変異陰性かつALK融合遺伝子陰性」の非小細胞肺癌に限って行われた試験に基づいている。「EGFR変異陽性」の場合はMET変異が陽性でもMET阻害剤の有効性が期待できるとは言えない。この場合はEGFR変異陽性腫瘍に基づいて治療を行うことが標準治療と考えられるが、MET増幅はEGFR-TKIによる治療を実施した後に出現するEGFR-TKIに対する耐性変異として知られている*9。

テポチニブ(テプミトコ)

日本で承認されたテポチニブはVISION試験(第2相)で奏効率42.4%、走行期間中央値12.4ヶ月で、肺癌に対して世界で最初に承認されたMET阻害剤である*10。

本邦ではテポチニブのコンパニオン検査としては2021年8月からAmoyDxなどが承認されている*11。もともとテポチニブが承認されていたときに使われていた「ArcherMETコンパニオン診断システム」は製造元企業の事情により製造販売がすでに終了している*12。治験データの多くは非小細胞肺癌に使用する場合もArcher社のコンパニオン診断システムで検出したMETΔex14変異によるものであることが必要である。

MET増幅

Molecular correlates of response to capmatinib in advanced non-small-cell lung cancer clinical and biomarker results from a phase I trial
Molecular correlates of response to capmatinib in advanced non-small-cell lung cancer clinical and biomarker results from a phase I trial

カプマチニブはコピー数10以上のMET増幅に対して一定の有効性を示すデータがある*13*14ため、FoudantionOne CDxのレポートではMET増幅に対してカプマチニブが推奨される。しかしMET増幅は本邦では保険適用外である(2021年1月時点でカプマチニブの保険適用はエクソン14スキッピング変異のみ)。
なお、Ann Oncolに掲載されたMET増幅に対するカプマチニブのデータでは、MET増幅はDNAベースNGSでの増幅(コピー数5倍以上)だけでなく、病理組織学的な評価でのIHC 2+/3+やMET/centromere比>2なども含めていることに注意。またこのカプマチニブのAnn Oncolに掲載された第1相試験はEGFR変異症例は原則として除外されており、MET増幅自体がEGFR-TKIの耐性変異であるため、EGFR変異とMET増幅のco-mutation/co-alterationはEGFR-TKIもMET阻害剤もいずれも推奨されない。これらのMET増幅は、オシメルチニブなどに対する耐性変異であると考えられる*15*16。

METエクソン14スキッピング変異陰性かつMET増幅があるEGFR変異陰性の非小細胞肺癌についてはクリゾチニブの有効性に関する報告*17*18があり、これもFoundationOne CDxのレポートでも推奨となる。なお、増幅はFISHでバックグランドに対して5倍以上(つまりベースラインを2とするとコピー数10以上)で増幅陽性と判定されている。クリゾチニブについては現在MET増幅およびMETΔex14の非小細胞肺癌に対する第2相試験が進行中*19。クリゾチニブの場合は患者申出療養制度(NCCH1901受け皿試験)の対象となる可能性がある。

MET増幅進行大腸癌に対してカボザンチニブ単剤またはカボザンチニブ+パニツムマブ併用の比較第2相試験が行われている*20。本研究はBRAF V600が野生型であることが条件となる(BRAF V600E変異を要する大腸癌の場合はそちらに準じて標準治療を行うか、BRAF阻害剤+MEK阻害剤(±EGFR抗体)を選択する。

他にテリソツズマブなどの臨床試験が進行中。

MET融合遺伝子

MET融合遺伝子も病的意義を持ち、それが治療標的として有望であることが臓器横断的に示されており、前臨床モデルではMET-TKIの有効性に関する検証が進められている*21。2025/02

MET変異

MET変異は基本的に推奨治療がないことが多いが、C-CAT報告書などで臨床試験が提示されることはある。

MET Y1003N

MET Y1003変異はクリゾチニブが奏効するという報告が散見される*22*23。このほかに下記のようにMETの活性化に関わるCNVやindelなどの変異が報告されている*24。

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exon14の変異であることからMETΔex14に似た活性化を示す可能性がある。ただしこれらの変異はコンパニオン診断外であると考えられるため、これに基づく治療は適応外使用となることに注意が必要。

関連ページ

ほかの遺伝子についてはがんゲノム/遺伝子別を参照。



*1 https://www.haigan.gr.jp/modules/important/index.php?content_id=227
*2 https://www.jto.org/article/S1556-0864(18)31258-9/fulltext
*3 https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000035817
*4 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27666659
*5 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202005/565443.html
*6 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202004/565331.html
*7 https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20200629-4
*8 https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200529150002_980.html
*9 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2893683/
*10 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/202003/564909.html
*11 https://oncolo.jp/uncategorized/210823hy01
*12 https://www.jrs.or.jp/information/other/20230228183428.html
*13 NEJM 2020 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2002787
*14 Ann Oncol 2020 https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(20)36380-8/fulltext
*15 Br J Cancer 2019 https://www.nature.com/articles/s41416-019-0573-8
*16 J Thorac Oncol 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31864549/
*17 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27664533/
*18 https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.9062
*19 http://www.scrum-japan.ncc.go.jp/lc_scrum/trial/crizotinib_b/index.html
*20 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/clinical_trial/patient/colon/20190122094651.html
*21 Cancer Discov 2025 https://aacrjournals.org/cancerdiscovery/article-abstract/doi/10.1158/2159-8290.CD-24-0417/751976/Pan-cancer-analysis-of-oncogenic-MET-fusions
*22 Lung Cancer 2019 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30885356/
*23 Cancer Discov 2015 https://cancerdiscovery.aacrjournals.org/content/5/8/850
*24 JCO 2016 https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.2015.63.4600

更新日:2026-11-06 閲覧数:5 views.