RET遺伝子異常
がん遺伝子パネル検査などで検出されるRET遺伝子異常と治療に関する個人的なメモです。がんゲノム/遺伝子別のRETの項目を独立させたページで、随時追記しています。正確な内容になるよう注意はしていますが誤っている可能性や古い情報であることもあるので、常にご自身で正確かつ最新の情報で検証するようにしてください
RET変異固形がんに関するレビュー
https://mct.aacrjournals.org/content/20/10/1769
RETと同時に起こる遺伝子変異に関するレビュー
https://aacrjournals.org/mct/article/20/10/1769/665725/Hallmarks-of-RET-and-Co-occuring-Genomic
LIBRETTO-001試験で検討されたRET異常の甲状腺癌では、RET変異143例中57%はM918Tで8%はV804M/Lであり、またRET融合遺伝子27例でRET融合のパートナー遺伝子は、CCDC6が52%、NCOA4が33%であった*1*2。ほかにKIF5Bなども報告が多い。
甲状腺髄様癌の場合
甲状腺髄様癌の場合は先天的なRET変異が高頻度(甲状腺髄様癌の30%)に見られる。バンデタニブやセルペルカチニブ(以前はLOXO-292と呼ばれていた)の有用性が示され*3、2022年2月にRET変異陽性甲状腺髄様癌に本邦でもセルペルカチニブが承認された。そのほかにプラルセチニブなどが有用であるとの報告があり*4、プラルセリチニブ+セルペルカチニブの併用療法の臨床試験も進行中(2022/2)。
甲状腺髄様癌ではRET M918T変異(56〜60%)とRET CCDC6-RET融合遺伝子の頻度が非常に多い。その他にV804M/L変異(7〜9%)、D631-liter633delinsE、E632-liter633del、A883F、D631-liter633delinsV、L790F、D898-E901del、D898_E901del+D903_S904delinsEP、K666 N、T636-V637insCRT、D378-G385delinsE、また融合遺伝子としてはCCDC186-RET、ERC1-RET、KTN1-RET、RUFY3-RET、NCOA4-RET融合遺伝子などが知られている*5。このRET M918T変異に対しては第3相LIBRETTO-531試験でセルペルカチニブがバンデタニブorカボザンチニブに対して大きく優越性を示した*6。
甲状腺髄様癌の診療指針については「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」などを参照し専門医にコンサルテーションを行うこと。
RET融合遺伝子
RET異常(点突然変異または融合遺伝子)でカボザンチニブやバンデタニブに不応となった後治療の甲状腺癌*7とプラチナベース治療抵抗性となった非小細胞肺癌*8を対象にしたLIBRETTO-001試験の結果からセルペルカチニブ(LOXO−292)が候補となる。この結果を元にセルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対して2021年9月28日に*9、RET融合遺伝子陽性の切除不能な甲状腺癌に対して2022年2月*10に承認された。またRET遺伝子変異陽性甲状腺髄様癌に対して承認されている。
RET融合遺伝子については上記のセルペルカチニブの他に、第2相試験の結果からレンバチニブ*11、バンデタニブ*12が候補となる。ほかに、症例報告レベルではアレクチニブの報告*13がある。RET融合遺伝子ではカボザンチニブも治療候補となる*14。
RET変異(SNV,indel)
V804M/Lはバンデタニブに対する耐性変異であるがセルペルカチニブはV804M/Lに有効であるという小規模な報告がある*15。
RET増幅
RET増幅がRET阻害剤の治療標的となるかどうかはコンセンサスがないように思われる。一方でRET増幅を認めたグリオブラストーマに対するセルペルカチニブの有効症例は過去に報告されている*16。
家族性腫瘍(MEN2型)
RETの機能獲得型変異はMEN2型の原因遺伝子。すなわち甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、副甲状腺を主たる症状とする常染色体優性遺伝性疾患である。上記3症状を示す2A型と、甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・マルファン症候群、舌や口唇の粘膜下神経腫、腸管神経節腫などを示す2B型がある。2A型で浸透率の低い亜型は甲状腺髄様癌のみを示すことがあり、一方で甲状腺髄様癌の生涯浸透率はほぼ100%であるので、これは家族性甲状腺髄様癌(familial medullary thyroid carcinoma : FMTC)と呼ばれることもある。なお常染色体優性遺伝形式を取るものの、偶発的にRET変異が見つかる場合には父由来染色体の頻度が高いと言われている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/32/4/32_267/_html/-char/ja
MEN2型の97%にRET遺伝子異常が見られる。2016年から甲状腺髄様癌に対するRET遺伝学的検査が保険収載されており*17、また現在の診療ガイドラインでもRETの評価が推奨されている。この場合は遺伝カウンセリングも考慮する。甲状腺髄様癌患者本人ではない「血縁者」もRET遺伝子異常を引き継いでいる場合は発がんリスクが高いのでRET遺伝子異常の有無を確認して変異があれば定期サーベイランスを受けることが望ましいが血縁者に対するRET遺伝学的検査は保険対象外。
二次的所見としてのRET変異が認められた際の対応について、欧州のガイドラインでは変異コドン別にもある程度のリスク分類がされている*18。2015年には米国でもガイドラインが出て変異コドン別のリスクが記載されるようになった*19。本邦のものではないことに注意で、本邦のガイドラインも参照すること。したがって、他の遺伝子変異と違って小杉班の資料だけではなく本邦及び欧米のガイドラインを参照して二次的所見の開示について検討することが望ましい。
- コドン609・768・790・791・804・891の変異が低リスクで甲状腺全摘時期についてはコンセンサスはない。MEN2Aの一部およびFMTCのすべて。
- コドン611・618・620・634が中リスクで5歳までに甲状腺全摘をすべき。MEN2Aの一部。
- コドン918・883・922の変異が高リスクで、甲状腺全摘の時期は生後1ヶ月までが望ましく、遅くとも生後6ヶ月までに実施する。副腎褐色細胞腫にも注意する。開示推奨度はAAA、germline testの必要性も◎。
関連ページ
ほかの遺伝子についてはがんゲノム/遺伝子別を参照。
*1 解説記事 ケアネット https://www.carenet.com/news/general/carenet/48906
*2 Lancet Oncol 2022 https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045%2822%2900541-1/fulltext
*3 NEJM 2020 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2005651
*4 Lancet Diabet Endocrinol 2021 https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(21)00120-0/fulltext
*5 NEJM 2020 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2005651
*6 NEJM 2023 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2309719
*7 NEJM 2020 https://www.nejm.org/doi/10.1056/nejmoa2005651
*8 NEJM 2020. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2005653
*9 https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/search/cancer/news/202109/572136.html
*10 https://news.lilly.co.jp/PDFFiles/2022/22-05%20co.jp.pdf
*11 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31710864/
*12 https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2016.34.15_suppl.9013
*13 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25349307/
*14 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23533264/
*15 JCOPO 2019 https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/PO.19.00189
*16 JNCCN https://jnccn.org/view/journals/jnccn/20/9/article-p966.xml
*17 http://men-net.org/medical/inspection.html
*18 http://www.noguchi-med.or.jp/test/gene/men2
*19 Revised American Thyroid Association Guidelines for the management of medullary thyroid carcinoma. Thyroid 25: 567-610, 2015
更新日:2026-11-06 閲覧数:4 views.