レ点腫瘍学ノート

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診療報酬改定2022の疑義解釈

診療報酬

先日診療報酬改定2022が発表されて、特にがん遺伝子パネル検査関連や外来化学療法加算から外来腫瘍化学療法加算への変更が大きかったためにTwitterでも話題になりました。

がんゲノム 診療報酬 令和4年度(2022年度)の診療報酬改定が告示されました。数ヶ月前からTwitter界隈で診療報酬改定の話が静かに盛り上がっていたので関心を持っていた方も少なくないかと思いますが、がん医療に関わる点についてここで少し取り上げてみたいと思います。診療報酬改定内容の要旨はこちらにあります。https://www.m

これに関していくつか疑義照会がされていましたが、その返事である疑義解釈が年度末ギリギリの3月31日夜に発表され、その内容でまたTwitterが盛り上がっています。

その診療報酬改定2022に関する厚生労働省のサイトはこちら。一番下の3月31日付けのところに疑義解釈も掲載されています。気になる点をいくつか見てみましょう。

令和4年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html

がん遺伝子パネル検査の年度またぎ問題(問185)

がん遺伝子パネル検査はこれまで検査出検時に8000点、結果説明時に48000点という配分になっていましたが、結果説明までの間の医療機関の検査コスト持ちだしなどの問題の是正がJSMOなどの各種学会などから要望されていました。それに応じて今後は検査出検時に44000点、結果説明時に12000点という配分になり、制度のゆがみが大幅に是正されています。しかし、旧年度中に検査を出検して新年度になってから結果説明を行った場合、8000点+12000点で合計20000点しか算定できないのではないかという懸念がありました。いわゆる、がん遺伝子パネル検査の年度またぎ問題です。

これについては問185で、一旦D006-19の8000点を取り下げて再度44000+12000点で算定し直すようにという通知がなされました。一安心です。

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がん遺伝子パネル検査のコンパニオン検査分の減算問題(問186・187)

FoundationOne CDxなどをコンパニオン検査として使ったあとに、さらにがんゲノムプロファイリング検査を行った場合には、コンパニオン検査として使った際の点数の減算を求められることになりました。

たとえば、去勢抵抗性前立腺癌においてFoundationOne CDxをBRCAのコンパニオン検査として用いて20200点を算定した後に、がんゲノムプロファイリング検査として44000+12000点を算定しようと思った場合には、がんゲノムプロファイリング検査を行う際に20200点分を減算する必要があるということです。これが全てのコンパニオン検査について言うのではないかということが心配されていましたが、さすがにその恐れは無く、あくまでFoundationOne CDxなどのがん遺伝子パネル検査として承認された次世代シーケンシング(本文の言葉で言えば「がんゲノムプロファイリング検査に用いる医療機器等として薬事承認又は認証を得ている次世代シーケンシング」)を用いた場合のみに減算が行われるようです。これも妥当。

なお、他院に転院しても遡及して減算が必要なようです。

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初回入院化学療法を行った場合の外来腫瘍化学療法診療料の算定可否(問151)

外来化学療法加算から外来腫瘍化学療法診療料に変更されるにあたって様々な点で医療機関にとっては算定できるチャンスが増えたのは良かったのですが、外来腫瘍化学療法診療料を算定するためには外来通院で専用の治療室(外来化学療法室)で治療を行うことが要件とされているため、初回入院で化学療法を行った場合の退院後に外来腫瘍化学療法診療料1のロなどが算定できるのかという疑問がありました。

これについては、「入院中に抗悪性腫瘍剤の初回投与を行っている場合は、当該初回投与のサイクルの期間中は外来腫瘍化学療法診療料を算定することはできない」という回答がなされています。

これはかなり理不尽な回答です。weekly PTXやGEM+nabPTXのようにday1,8,15に投与を行うような1サイクル4週間のレジメンの場合にday1のみ入院で行った場合には、その後のday28まで外来腫瘍化学療法診療料が取れないと言うことでしょうか。すなわち、外来腫瘍化学療法診療料1のロだけでなく、day8とday15の点滴の際の外来腫瘍化学療法診療料1のイも算定できないという風になってしまいます。これはちょっとおかしいと思いますが。

現場としては、これの抜け穴として1サイクル目は「何らかのふしぎな力によってday1のみで治療を一旦中断」し、その翌週からはまた「何らかの不思議な力によって2サイクル目のday8,15のみを実施」して、このday1とday8,15はあくまで別のサイクルです、と強弁するようなチートが必要となるんじゃないでしょうか・・・。

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外来腫瘍化学療法診療料1のロが算定できる期間はいつまでか(問148)

「B001-2-12」外来腫瘍化学療法診療料が算定可能なレジメン期間とは、「当該レジメンの継続が可能である場合に限りレジメンの期間内として差し支えない」ので副作用で次サイクル開始が遅延してもずっとレジメン期間と言えそうです。

「つまり…我々がその気になればレジメン期間は、10年20年ということも可能だろう…ということ…! 」

がんに関する研修を受けた管理栄養士とは何か問題(問131)

B001-9の外来栄養食事指導料の注3で悪性腫瘍の栄養管理に関する研修を修了した管理栄養士が栄養指導を行った場合には加算が算定できるようになりますが、この「研修」を修了って具体的に一体何の研修を指すのかが明確にされていませんでした。

これについては今回の疑義照会によると、「B001」の「9」外来栄養食事指導料の注3に規定する施設基準における「悪性腫瘍の栄養管理に関する研修を修了」は、現時点では日本病態栄養学会及び日本栄養士会が共同して認定している 「がん病態栄養専門管理栄養士」に係る研修の修了を指すようです。

不妊治療が保険適用となったがAYA世代の妊孕性温存後の不妊治療は対象になるのか(問41・42)

不妊治療が保険適用となったが、不妊症であると診断された夫婦である必要があるため、がん患者が妊孕性温存のために温存した卵子精子を用いた妊娠治療は対象とならない。なお、「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」の支援が用意されているのでそちらを利用すること、とのことのようです。

専任医師や専任薬剤師は24時間365時間院内に滞在する必要あり?(問157)

外来腫瘍化学療法診療料において、「専任の医師、看護師又は薬剤師が院内に常時1人以上配置され」の「常時」とは24時間という意味であると明記されていまいました。ということは、院内唯一の専任医師になってしまったら死ぬまで院外に出ることができず朽ち果てるまで24時間幽閉されます。

…えっ!専任医師や専任薬剤師が1人とかの場合、その医師や薬剤師が死んじゃわない?大丈夫??

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すでにバイオ後続品を使用している患者にバイオ後続品導入初期加算は取れない(問158,159)

バイオ後続品導入初期加算は、すでにバイオ後続品を導入している患者には算定不可。まあ、いったん先行品に戻してほとぼりが冷めた頃にバイオ後続品を再導入するという裏ワザがあるかもしれませんが・・・ゴニョゴニョ。

さいごに

今回の改定はがん診療の現場にとってもかなり大きな変更が多く、それも医事課の人に任せっきりではなく現場の医師・看護師・薬剤師がその加算の目的と価値を把握して積極的に算定しに行く取り組みを行う必要があるものが少なくないため、勉強が必要でした。

専任医師や専任薬剤師は24時間365時間院内に滞在する必要あり?(問157)と、初回入院化学療法を行った場合の外来腫瘍化学療法診療料の算定要件(問151)は、ちょっと理解に苦しみますが…

思えば数年前までは診療報酬改定があってもあまり詳しいことはしらず、せいぜい腫瘍マーカー測定時と緊急入院時、あとは選定療養費の制度くらいしか知らなかったのに、特にがん遺伝子パネル検査が始まってからの数年間は厚生労働省のサイトを今までにない頻度でチェックするようになり、医事課の方々ともかなりコミュニケーションを取るようになりました。医事課の方々の顔と名前が一致するなんて今まで考えられなかったのがウソのようです。今後は医師といえども、このあたりの勉強を熱心にしてゆく必要がありそうです。


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更新日:2022-03-31 閲覧数:2299 views.