レ点腫瘍学ノート
Topがんゲノム遺伝子別

FGFR1・FGFR2・FGFR3遺伝子異常

がんゲノム

がん遺伝子パネル検査などで検出されるFGFR1・FGFR2・FGFR3遺伝子異常と治療に関する個人的なメモです。がんゲノム/遺伝子別のFGFR1/FGFR2/FGFR3の項目を独立させたページで、随時追記しています。正確な内容になるよう注意はしていますが誤っている可能性や古い情報であることもあるので、常にご自身で正確かつ最新の情報で検証するようにしてください

増幅も変異も起こり得るほか、染色体異常(fusionやrearrangement)もある。全固形腫瘍の7.1%に異常が見られるとの報告がある*1。この報告によると、66%が増幅で、26%が変異、8%が染色体構造異常(rearrangement)。FGFR1が3.5%、FGFR2が1.5%、FGFR3が2.0%。染色体構造異常については蛋白質へ翻訳されないものもパネル検査のレポートで報告されることに注意が必要。

FGFR1活性化変異

FGFR1変異に対する治療は現時点では確立されていない。

FGFR1 K656Eは活性化変異として知られており、FGFR阻害剤インフィグラチニブの有効性が報告されている*2。またFGFR1 N546Kに対するFGFR阻害薬ペミガチニブの有効性の報告もある*3。一方でFGFR1 K656E(ホットスポット変異)とV561M(いわゆるGatekeeper変異)が併存する場合はFGFR阻害剤に対する耐性を生じる可能性が示唆される*4。

脳転移を伴うHR+HER2-乳癌に対するパゾパニブ投与が著効した症例報告がある*5。なお、パゾパニブは患者申出療養の対象となりえる。

FGFR阻害剤E7090や、スルファチニブなどの臨床試験も行われている。

FGFR1遺伝子再構成

FGFR1遺伝子再構成を有する骨髄腫・リンパ増殖性疾患ではFGFR阻害薬ペミガチニブが極めて高い層効率を示した*6。

FGFR2融合遺伝子

FGFR2 fusion/rearrangementを有する肝内胆管癌に対しては2020年4月にペミガチニブがFDAで承認され*7、本邦でもFGFR2融合遺伝子陽性に対して2021年3月にペミガチニブが承認となっている。

本邦のデータで肝内胆肝癌のうち5%程度がFGFR2融合遺伝子陽性となるが、これはRNAseqでのデータなのでDNA解析であるFoundationOne CDxの結果と乖離がある可能性があり*8、実際FoundationOne CDxでのFGFR2融合遺伝子の検出率はそれより低い可能性がある。

本邦では添付文書上はFGFR2融合(fusion)と書かれているが、遺伝子間領域の融合も対象とされているため再構成(rearrangement)も保険適用の範囲内ではないかと考えられる。FGFR2融合遺伝子陽性胆管癌に対するペミガチニブの試験のデータでは、intron17とexon18などのfusionとrearrangementでは同等の奏効率であったと記載されている*9。

ペミガチニブは当初はFGFR2/3変異なども対象に臨床試験を行っていたが、最終的にポジティブの結果が出て承認に至ったのはFGFR2のみであった。

FGFR2阻害剤フチバチニブ(TAS-120)の開発も進行中である。またAKT阻害剤TAS-117をフチバチニブ(TAS-120)と併用する試験も行われている(2021年8月)。現在FGFR阻害剤の保険適用がない臓器に対してもペミガチニブの患者申出療養の対象になる可能性もある。

エルダフィチニブのBLC2001試験の結果からFGFR2-BICC1とFGFR2-CASP7はエルダフィチニブ感受性であると報告されている*10*11。

FGFR2活性化変異

ペミガチニブ、フチバチニブ、エルダフィチニブ、タスルグラチニブ(E7090)などのFGFR阻害剤が有効である可能性があると考えられている。この中ではフチバチニブのみが不可逆的阻害剤である。また既存のFGFR阻害剤に体制となった後の二次治療として次世代型FGFR阻害剤チネンゴチニブやMEK阻害剤・ICIなどとの併用療法の開発が進んでいる。胆道癌でFGFR2 Y375CやW290C等の活性化変異に対するペミガチニブの有効報告がある*12。

D101Y, S252W, P253R, A314D, A315T, S373C, Y376C, C383R, N550K, K660Eなどの変異がよく見られるものとしての報告がある*13が、これらに対する標的治療は確立されていない。

FGFR3活性化変異

FGFR3活性化変異のホットスポットとしてはR248C、S249C、G372C、Y375C、K652Eの5つがよく知られており、この5種類の変異でFGFR3活性化変異の90%を占める*14。浸潤性膀胱癌の10-20%ではこれらの変異が見られるとされている。

FGFR3活性化変異陽性の転移性膀胱癌に対してはFGFR阻害薬エルダフィチニブが奏効率40%を示し*15、2019年4月にFGFR3活性化変異陽性の転移性膀胱癌に対してFDAで承認され*16、日本でも2025年7月に発売となった*17。BLC2001試験の結果からFGFR3の活性化変異でエルダフィチニブの有効性があると考えられエルダフィチニブの承認につながったのはR248C、S249C、G370C、Y373Cの4つである*18。

またFGFR3 Y373Cに対するペミガチニブの報告もある*19。フチバチニブ・ペミガチニブなどが開発進行中であり将来的に候補となり得る。

FGFR3 K650Eは活性化変異として知られており、FGFR阻害剤のインフィグラチニブの治療標的となり得るとの報告がある*20。

米国ではFGFR2/3変異をNGSベースの遺伝子パネル検査を行わずにPCRベースのコンパニオン診断薬で検査することができる*21。(2023/7)

FGFR3融合遺伝子

BLC2001試験の結果からFGFR3-TACC3とFGFR3-BAIAP2L1のFGFR3融合遺伝子はエルダフィチニブが有効とされてFDA承認につながっており*22*23、日本でも2025年7月に承認となった*24。

泌尿器系以外でも、FGFR3-TACC3 fusion陽性の肺扁平上皮癌に対してエルダフィチニブが奏効したという一例報告*25やFGFR3-TACC3 fusion陽性のグリオーマに対するインフィグラチニブの有効性の報告がある*26。一方でペミガチニブのFIGHT-101試験ではFGFR3-TACC3 fusion症例が含まれていたが奏効しなかったようである*27。現時点ではFGFR3に対するFGFR阻害剤の有効性は確立はされていない。ペミガチニブの患者申出療養の対象になる可能性がある。

FGFR1増幅・FGFR2増幅

FGFR1増幅はパゾパニブが有効との報告もある*28。ただしFGFRは小児がんなどで強いドライバー変異となるものがあるものの、成人では多くの場合はFGFR familyの異常がドライバー変異とは言えないケースが少なくないために、真に治療標的になり得るものかどうかは慎重な検討が望ましい。もともとFGFR1増幅はユーイング肉腫などの肉腫で高頻度に見られる遺伝子異常であるため、FGFR1増幅がパゾパニブ奏効予測因子なのか単純に肉腫に対して効いているだけなのかの判断が難しい。FoundationOne CDxでは、FGFR1増幅などがある場合でも臓器によってパゾパニブなどが推奨薬に載ったり載らなかったりするようである(胆膵癌や乳癌では推奨され、婦人科癌などでは推奨されない?)。今後のエビデンスの蓄積により推奨が変わる可能性がある。パゾパニブは患者申出療養の提供薬剤に含まれているがFGFR1の増幅に患者申出療養を認めるかどうかはそれを実施する中核拠点病院の判断による。

高度にFGFR2増幅の胃癌などに対してパゾパニブが長期奏効した症例報告がある*29*30が、奏効が見られるのはcopy数は16以上と高値である。

その他のFGFR family

FGFR1-3阻害剤のフチバチニブ(TAS-120)やほかにいくつかのFGFR阻害剤が候補*31となる。レンバチニブがFGFR経路を含むマルチキナーゼ阻害剤であり、このために推奨薬の候補に上がってくることがあるが、現状ではFGFR family変異に対するレンバチニブのエビデンスは乏しい。

エーザイの新規FGFR阻害剤E7090の臨床試験が国内各所で行われていた*32が増幅例については募集終了している可能性あり。

頭頸部癌でFGF3, FGF4, FGF6, FGF19, FGF23の増幅を示した症例でpan-FGFR阻害剤がCRを示したという症例報告がある*33。

臓器によってはフチバチニブ(TAS-120、FGFR阻害剤)+TAS-117(AKT阻害剤)の臨床試験などが進行中である。

関連ページ

ほかの遺伝子についてはがんゲノム/遺伝子別を参照。



*1 https://clincancerres.aacrjournals.org/content/22/1/259
*2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344029/
*3 JCOPO 2022 https://ascopubs.org/doi/10.1200/PO.21.00371
*4 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30257990/
*5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29223982/
*6 NEJM evidence 2025 https://evidence.nejm.org/doi/full/10.1056/EVIDoa2500017
*7 https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-pemigatinib-cholangiocarcinoma-fgfr2-rearrangement-or-fusion
*8 J Gastroenterol 2021 https://link.springer.com/article/10.1007/s00535-020-01735-2
*9 Lancet Oncol https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(20)30109-1/fulltext
*10 https://www.jnj.com/media-center/press-releases/balversa-erdafitinib-receives-u-s-fda-approval-for-the-treatment-of-patients-with-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-carcinoma-with-certain-fgfr-genetic-alterations
*11 NEJM 2019 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1817323
*12 https://aacrjournals.org/cancerres/article/83/8_Supplement/CT016/725419/Abstract-CT016-Clinical-and-translational-findings
*13 JNCCN 2023 https://jnccn.org/view/journals/jnccn/21/2/article-px.xml
*14 https://bmccancer.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12885-022-09478-4
*15 NEJM 2019 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1817323
*16 https://www.mdanderson.org/newsroom/targeted-therapy-erdafitinib-effective-for-patients-with-advanced-bladder-cancer-and-specific-gene-mutations.h00-159304623.html
*17 https://innovativemedicine.jnj.com/japan/press-release/20250716
*18 https://www.jnj.com/media-center/press-releases/balversa-erdafitinib-receives-u-s-fda-approval-for-the-treatment-of-patients-with-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-carcinoma-with-certain-fgfr-genetic-alterations
*19 https://aacrjournals.org/cancerres/article/83/8_Supplement/CT016/725419/Abstract-CT016-Clinical-and-translational-findings
*20 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344029/
*21 https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-erdafitinib-metastatic-urothelial-carcinoma
*22 https://www.jnj.com/media-center/press-releases/balversa-erdafitinib-receives-u-s-fda-approval-for-the-treatment-of-patients-with-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-carcinoma-with-certain-fgfr-genetic-alterations
*23 NEJM 2019 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1817323
*24 https://innovativemedicine.jnj.com/japan/press-release/20250716
*25 JTO Clin res rep 2023. https://www.jtocrr.org/article/S2666-3643(23)00050-4/fulltext
*26 Clin Cancer Res 2022 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344029/
*27 https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(22)00110-7/fulltext
*28 Gynecol Oncol Rep. 2022 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35586703/
*29 BMC Gastroenterol 2022 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9331120/
*30 Cancer Discov. 2016 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27179038/
*31 https://ascopost.com/news/november-2020/futibatinib-for-patients-with-refractory-intrahepatic-cholangiocarcinoma-and-fgfr2-fusionsrearrangements/
*32 https://rctportal.niph.go.jp/en/detail?trial_id=jRCT2031210043
*33 https://ascopubs.org/doi/10.1200/PO.18.00100

更新日:2026-11-06 閲覧数:5 views.