KRAS G12C大腸癌の現状
非小細胞肺癌では一定の成果を示して承認された(薬価は2022/2時点で未収載)ソトラシブは、大腸癌では治療開発が苦戦しているようです。KRAS G12C変異陽性大腸癌に対するソトラシブ単剤での治療開発は断念され、今は多剤併用での臨床試験や次世代のKRAS G12C阻害剤であるアダグラシブの開発も進んでいるようです。
現状でわかっているKRAS G12C変異陽性大腸癌に関する情報をまとめておきます。
ソトラシブ(AMG510)
ソトラシブはKRAS G12Cに対して初めて実用化された薬剤で、もとはAMG510というコードネームで呼ばれていました。undruggable RASと言われていた領域に切り込んだことで数多くの特集が組まれたりしました。
非小細胞肺癌ではすでにCodeBreaK100試験肺癌コホートで奏効率37%、病勢制御率81%という好成績を示してFDAおよび本邦で承認されています(本邦は2022/2時点で薬事承認はされたが薬価未収載)。STK11やKEAP1、TP53など免疫チェックポイント阻害剤が効きにくかったり他の分子標的治療薬が苦手としそうなコホートでも一定の有効性を示したようです。STK11との共変異でCRになった症例も出ているようです。
#ESMO20 Illustrative case provided in patient with STK11 co-mutation, 5 prior therapies since 2013 including chemo and nivolumab. Had CR in target lesions (low burden of disease shown) and had CNS response (though all CNS lesions had been radiated). Progressed at 1.5y, no DLTs. pic.twitter.com/1A3x5ka77v
— Stephen V Liu (@StephenVLiu) September 20, 2020
このCodeBreaK100試験肺癌コホートの論文は、ちょうどASCO2021のスケジュールに合わせてNEJMに掲載されました。
一方で大腸癌ではパッとしません。CodeBreaK100試験大腸癌コホートでは二次治療において62例に投与してPR 6例で奏効率9%ってのはちょっと寂しい成績。単剤での治療開発は断念されたようです。
ソトラシブに更に他剤を併用するCodeBreaK101試験が進行中です。また、パニツムマブなど抗EGFR抗体薬との併用の臨床試験も別で進んでいるようです。
ちなみにソトラシブは併用療法のP1b/2試験(CodeBreak101試験)が既に始まってて併用のペアは何なのかなと見てみたら、もうクソミソなんでもありの「筋肉は全てを解決する」コンセプトの試験だったhttps://t.co/TaOs52jZ5D
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) June 4, 2021
ソトラシブの耐性機序
Natureにソトラシブの耐性獲得のメカニズムに関する論文が掲載されています。KRAS G12Cを抑えたらフィードバックがかかってG12VやG13Dなどの2nd RAS mutationの他に、BRAF、EGFR、FGFR2そしてMYCが一斉に反撃してきてソトラシブが無効化されるという、恐ろしい仕組みのようです。
しかもその耐性機序が一様でなくバラバラなので、併用療法を行うにも固定の治療薬ではなく患者ごとに再度病変を採取してゲノムプロファイリング検査にかけないといけないという、気が遠くなりそうな道のりです。
resistance to KRAS G12C inhibition includes alterations in KRAS, NRAS, BRAF, EGFR, FGFR2... . Low AF mutations in KRAS(G12V or G13D), NRAS(Q61K or G13R), MRAS(Q71R), BRAF(G596R) are observed in the cells with KRAS(G12C).https://t.co/3IVmsa4o0k pic.twitter.com/Up5aROse4X
— soria (@jsoriamd) November 11, 2021
In @nature today, work led by Piro Lito to understand resistance to KRAS G12Cinhibitors.
— Gʀᴇɢᴏʀʏ Rɪᴇʟʏ (@RielyMD) November 10, 2021
-no dominant resistance alteration
-treatment-emergent variants can inform the choice of downstream therapy.
-co-targeting ERK + KRAS(G12C) may prolong the benefit https://t.co/f3dG2gf3It pic.twitter.com/0qI1xvnlyd
アダグラシブ(MRTX849)
アダグラシブはソトラシブに次ぐ次世代のKRAS G12C阻害剤です。こちらはソトラシブと違って単剤でも一定の有用性を示しているようですが、やはりセツキシマブとの併用が必要との意見もあるようです。試験途中のデータですが、単剤で奏効率22%、セツキシマブとの併用で奏効率39%との話*1があります。
非小細胞肺癌などでアダグラシブ+ペムブロリズマブ併用療法などのKRYSTAL-7試験*2も進行中です。
KRYSTAL-1試験(第1/2相)
#ESMO21 Channel 1: Presidential symposium 2
— Ben Westphalen (@BenWestphalen) September 19, 2021
KRYSTAL-1: Adagrasib as Monotherapy or Combined w Cetux in #crcsmpats w KRASG12C by @DrJaredWeiss
Swimmer’s Plot (DoR) & PFS - quite promising in heavily pretreated #crcsm patients. @OncoAlert 🚨 @myESMO#PrecisionMedicine pic.twitter.com/xIZswxXpqk
#GI22 Advances for cancers coming in subsets of #precisionmedicine stories. Adding one more 🎯 to the actionable markers gained from mutational profiling.
— Pashtoon Kasi MD, MS (@pashtoonkasi) January 21, 2022
🧬#KRASG12C
💊 #AdagRASib#PANCSM #HPBCSM #CRCSM #LCSM @ASCO #PrecisionOncology pic.twitter.com/nqktrsSXAG
アダグラシブの耐性機序
NEJMにアダグラシブの耐性メカニズムに関する文献があります。
こういう基礎研究味がある論文がNEJMに載るのは珍しいですね。
他には、エキパネでお馴染みのSPYK04なども開発が進行中ですが、今のところこのSPYK04がどういった薬剤なのかは詳しくは分かりません。
語尾のラシブ
ソトラシブにせよアダグラシブにせよ、語尾がラシブですね。他に開発中のものとしてはサリラシブ(Sairasib)などもありますl
PI3K阻害剤アルペリシブなどからも分かるように、-sibは小分子で阻害剤として働く化合物を指すようです。-rasibはKRASやNRASやHRASなど RASに対する阻害剤を示す共通語尾のようです。
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更新日:2022-02-15 閲覧数:1758 views.