TNMB分類
TNM分類にbiologyを加えたTNMB分類
現在のがんの病期分類は2018年から使われているTNM分類第8版で、腫瘍の臓器ごとに若干の違いはあるものの腫瘍の大きさ(T分類)、リンパ節転移(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)で分けています。
癌取扱い規約には手術標本であればv分類やly分類などの脈管浸潤を追加されることもあるほか、乳癌や神経内分泌腫瘍などでは組織学的gradeやki-67 labeling indexのような増殖活性に関連する因子が追加されることもありますが、多くの場合は形態的に診断されているのが現状です。そして、1期の非小細胞肺癌でも5年生存率は40-45%と予後は必ずしも良くはなく、病期分類が臨床的な進行度・悪性度と相関しないという問題を指摘されています。
そこで近年発展が著しいゲノミクスの技術を活用してその精度をあげようという取り組みがなされています。その一つとして、非小細胞肺癌でこのTNM分類に遺伝子発現情報を加味したTNMB分類というものが提唱されているようです(BはbiologyのB)。
なお、このTNMB分類は菌状息肉症で使われる血液中の異型リンパ球の割合によるB分類とは全く異なりますので混同しないように。
掲載された文献はJAMA Network Open誌で、全文フリーで読むことができます。
非小細胞肺癌での例
非小細胞肺癌(97%が肺腺癌)に対して、BAG1, BRCA1, CDC6, CDK2AP1, ERBB3, FUT3, IL11, LCK, RND3, SH3BGR, WNT3Aの11遺伝子を3つのバックグラウンド遺伝子(ESD, TBP, YAP1)と比較してB分類を低リスク・中リスク・高リスクの3段階にわけることで、TNMB分類はTNM分類よりも高精度に生存率を推定できるとしています。結語では、TNM分類に分子遺伝学的な予後予測因子を加えることでよりよい予後予測ができると述べられています。
他の臓器の腫瘍でも言えるのか、検討する遺伝子の組み合わせがこれで良いのかという問題はありますが、今後もこの流れは強まってきそうです。一方で、TNM第8版がTNM第7版と比べて予後予測制度を向上させられなかったことや、分子遺伝学的プロファイルを治療に取り込んでも治療成績の工場が乏しかったSHIVA試験のようにゲノミクスを取り入れれば何でも成績が改善するわけでもないので、慎重にその適性を見極めてゆくことが大切そうです。
追記
しかし考えてみたらゲノム情報と関係無しにbiology情報をTNM分類とは別に加えて臨床判断に活用しているがんはいくらでもあって、例えば前立腺癌でのGleason scoreや胃癌の分化度などもTNM分類とは別の臨床分類ですね。
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更新日:2019-12-23 閲覧数:1951 views.