がん遺伝子パネル検査から標的治療につながる割合の数値まとめ
JSMO2021で思った以上に多くの施設からがんゲノム医療の実勢報告が出ていたので、がん遺伝子パネル検査を受けた後の標的治療導入率についてのメモをかき集めてまとめました。
論文として出ている報告
Next-generation sequencing (NGS) of tumor tissue (ie, clinical sequencing) can guide clinical management by providing information about actionable gene aberrations that have diagnostic and therapeutic significance. Here, we undertook a hospital-based prospective study (TOP-GEAR project, 2nd stage) t …
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30742731/
Cancer Sciに掲載されたこの文献では、もともと2019年の報告では187例中の25例、13.3%が標的治療を導入されたということになっていました。15例が臨床試験、4例がオフラベル使用、6例が保険承認内の使用でした。その後はどうなっていたのでしょうか。
This investigation provides reference data for the application of precision oncology in a clinical setting. Further investigations on the standardization of clinical annotations are warranted.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33385275/
2020年秋に全国11カ所のがんゲノム医療中核拠点病院を対象にした調査が実施され、IJCOに掲載されました。これによると2019年6月の保険承認から2020年1月までの間に747例ががん遺伝子パネル検査を受けて、標的治療を導入された割合はわずかに3.7%。この3.7%のうち臨床試験は2.1%でした。ちなみに3.7%というのは28例に相当するのですが、この28例のうち16例を単一施設がたたき出していて、11の中核拠点病院のうち5施設は0例となっています…。
2019年の治療導入率よりは大きく下がってしまいましたが、自分の感覚的にもこちらの方が実感に合う気がします。
JSMO2021での学会報告
ここからはかなり急いで取ったメモを元にしているので一部正確性を欠いている可能性があります。参考程度に見てください。
- 静岡県立がんセンターは182例やって標的治療導入が13例(保険診療2例、臨床試験11例)/JSMO2021 O7-3
- 広島大学病院は94例やって治療は4例。ちなみに広島大学病院は自費でのがん遺伝子パネル検査をやっているようですが、上記の数字はおそらく保険診療に限定したデータ。/JSMO2021 O7-1
- 近畿大学病院はFoundationOne CDxを175人にやって13.7%が治療につながる。うち6割が治験。つい先日論文としてPublish。https://theoncologist.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/onco.13639
- がん研有明は114例やって治療提案が25例だが実際に治療したのはFGFRなど4例のみ JSMO2021 PD3-1-4
- 大阪日赤は29例やって3例に治療提案、うち治療は2例(自費1と治験1)JSMO2021 PD3-1-2
- 大阪国際がんセンターが99例やって治療が2例
- 横浜市立病院が36例やって治験施設に紹介したのは8例あったがPS不良などで治験に参加できずが6例あり、結局標的治療までたどり着いた症例は今のところ0例 JSMO2021 PD3-1
- 東京医科歯科、204例にF1やって標的治療が39例(19%)、試験参加が14例。ORR28%、CBR49%。大腸癌と乳癌が多く、NECでMSI-Hも1例あったと。PD3-2
- 京都大学は147例で標的治療16(治験6、受け皿5、自費3、保険2)PD3-2
- 市立東大阪は12例で1例が試験。
海外
海外では13780人にやって、40%に変異が見つかるが治療薬が投与されたのは12%という報告*1があるほか、NCI-MATCHなども適宜データをアップデートしています。
他の報告は下記のようになっています。
- PREDICT試験は347例中87例(25%)Mol Cancer Ther 2016
- 500例中188例(37.6%)Cancer Res 2016
- IMPACT-COMPACT試験は1893例中84例(5%)Genome Med 2016
- Cleveland Clinicでは250例中109例に治療を提示したが実際に治療したのは24例(10.8%)、そのうち5.3%が臨床試験で4.0%はオフラベル使用だったようです。JNCI 2016
- Johns Hopkins Practiceでは155例中4例が既承認治療、10例がオフラベル、6例が臨床試験。JCOPO 2017
- MSK-IMPACTでは100000例中527例 Nat Med 2017
- 京都大学Oncoprimeでは85例中9例 Cancer Sci 2018
- NCI-MATCHでは5954例中985例(17.8%)が臨床試験へ。ただしNCI-MATCHはNGSだけでなくIHCでも解析しています。JCO 2020
- CLHURC(北海道大学)161例中17例 Cancer Sci 2020
保険承認を経て急速に認知度が高まったがん遺伝子パネル検査 がん遺伝子パネル検査によるがんゲノム医療が日本に導入され、これまでは一部の高度医療機関でしか行われていなかったような網羅的な遺伝子検査に基づくがんの個別化医療が、一気に全国の医療機関の手の届くところまでやってきました。現在、全国にあるがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連
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更新日:2021-02-21 閲覧数:1893 views.