再活性化予防の観点から見たHBV関連各種検査の意味
B型肝炎ウイルス(HBV)に関する検査項目は多くの種類のものがあります。この中で、がん薬物療法の領域で話題になるHBV再活性化予防の観点で関連する項目は、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体およびHBV-DNAと思いますが、それぞれの検査項目の意味は以外に認識されていないように思います。
再活性化に関わるHBV関連検査の意味は
非常に大まかには下記のようになっていると考えてよいように思います。ただし、これはHBV初感染からある程度時間が経ってからのことなので、初感染後の肝炎急性期や小児には当てはまりません。
- HBs抗原[+]→血中HBV漂ってる
- HBc抗体[+]→かつて血中HBVいた(まだ肝細胞にHBVいるかも)
- HBs抗体[+]→かつて血中にHBVいたが今はいない(まだ肝細胞にHBVいるかも)orワクチン後
- HBV-DNA[+]→体のどこか(肝内)でHBVが増殖してる
- HBe抗原[+]→HBVが活発に活動
- ALT[↑]→いま肝臓にダメージ
ガイドライン3.2版からはHBs抗原・HBs抗体・HBc抗体は同時測定になっています。HBV-DNA測定は本来は化学療法開始前に測定すべきですが、実際にはHBs抗原陰性ならHBV-DNA測定と同時に化学療法を開始して陽性判明後すぐTAF開始すれば十分間に合う印象です(行儀よくはない)。https://t.co/ox7iERxUW5
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) November 22, 2021
がん薬物療法などの免疫抑制によりHBs抗原[-]HBc抗体[+]でHBV-DNAが[-]→[+]に転じるのは肝内で休眠HBVが目を覚まし増殖し始めたことを示し、やがて肝臓から血中にHBVが出てくるとHBs抗原[-]→[+]となり最後にALT[↑]します。ちなみに、核酸アナログ製剤(エンテカビルやテノホビル)はHBVの増殖を抑制はするけどHBVそのものは消せません。
上記の例外(比較的まれ)
ちなみに、例外もあるようです。狂犬先生によると、上記の例外として挙げられるものは以下の物があるようです。
- HBs抗原陰性でもHBVが血中を漂うことはある(HBV DNAが低値のケース)。
- HBs抗体陽性でもたまに血中にHBVは存在する(エスケープ変異株ではHBs抗体が中和抗体として働かないのでHBs抗体陽性でもHBVが血中に存在しうる)。
- HBe抗原陰性でも活発なケースがある(例としてプレコア変異やコアプロモーター変異によりHBe抗原を作れない変異ウイルス、またはHBe抗原を作る命令が落ちている変異ウイルス)
大体オッケーだと思います。もう少しだけ正確に言うと、
— 狂犬🇺🇸 (@kyoken_h) November 22, 2021
-HBs抗原陰性でもHBVが血中を漂うことはある。HBV DNAが低値のケース。
-HBs抗体陽性でもたまに血中にHBVは存在する。エスケープ変異株。
-HBVDNA陽性、体のどこかでは肝臓内のみですね。分裂→増殖。
-HBe抗原陰性でも活発なケースあり。→
HBs抗原が陽性の場合は末梢血中にHBVがいますが、末梢血中にHBVがいない場合でも体内にHBVが存在していることはあり、その場合はHBVは肝細胞内にいることになります。末梢血中以外ではなぜ肝細胞内にしかHBVが存在しないかというと、HBVは細胞に侵入する際に胆汁酸トランスポーターを利用しており、これが肝細胞にしか存在していないからのようです。
なお、HBVが肝臓内でしか感染しない理由はウイルスの受容体がヒトの胆汁酸トランスポーターであることです。他の臓器には発現していない蛋白であり、肝臓に特異的に感染します。
— 狂犬🇺🇸 (@kyoken_h) November 22, 2021
勉強になりました。
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更新日:2021-11-22 閲覧数:1005 views.