レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2021年 / 11月23日

プロテオゲノミクスで見た非小細胞肺癌のサブタイプ

今日見つけたのは、Nature Cancerに掲載された非常に興味深い、非小細胞肺癌をプロテオゲノミクスでサブタイプに分類した研究です。

Proteogenomics of non-small cell lung cancer reveals molecular subtypes associated with specific therapeutic targets and immune-evasion mechanisms - Nature Cancer
Lehtiö and colleagues perform proteogenomic analysis of non-small cell lung cancer and identify molecular subtypes with distinct immune-evasion mechanisms and therapeutic targets and validate their classification method in separate clinical cohorts.
https://www.nature.com/articles/s43018-021-00259-9

Very happy to present our #proteomics analysis of #lungcancer published today @NatureCancer!🙂
Here’s a walk-through: #MassSpec analysis covering almost 14k proteins in 141 NSCLC tumors revealed 6 proteome subtypes with distinct biology. 1/6https://t.co/XK2oMWqtj4 pic.twitter.com/945kVRaHv0

— Lukas Orre (@LM_Orre) November 22, 2021

この研究は非小細胞肺癌のプロテオーム解析とゲノミクス解析を合わせて実施しています。141症例の様々な組織型の非小細胞癌に関して13,975種類にもおよぶ蛋白質のプロテオーム解析を行い、さらに370遺伝子のターゲットシークエンスも合わせて実施してその結果を統合解析しているようです。その結果、非小細胞肺癌は6種類のパターンに分けられると著者たちは述べています。

この6種類の非小細胞肺癌のサブタイプについて見てみましょう。サブタイプの違いに影響する要素としては、組織型・進展様式・免疫細胞浸潤・ドライバー遺伝子変異・遺伝子変異型などが影響すると言及されていますが、主に6型はSqCC、5型はLCNECを代表しているようです。EGFR肺癌はほぼ1型、2型はPD-L1高値になっています。

4型はTMB-Highだがネオアンチゲンは少なくcold tumorなのが興味深い(そして4型はSTK11変異が多い)ところです。TMB-Highは一般的にはネオアンチゲンが多く免疫チェックポイント阻害剤の有効性が高いHot tumorと言われていますが、確かに非小細胞肺癌では免疫チェックポイント阻害剤の奏効予測バイオマーカーとしてはPD-L1染色を使うことが多く、TMBやMSIはあまり重視されていません。ネオアンチゲンの多さをTMBで説明できない理由としてepigeneticな調節の差が関与している可能性があると述べられています。また、それに関連してかFGL1などの転写も他のサブタイプとかなり違うようです。

Unexpectedly, #proteogenomics analysis revealed that high neoantigen burden was linked to global hypomethylation, and that complex neoantigens mapping to genomic regions normally not active in lung were produced in immune-cold subtypes. 3/6 pic.twitter.com/PqUerwFmf1

— Lukas Orre (@LM_Orre) November 22, 2021

今の肺癌標準治療はドライバー変異とPD-L1で層別化していますが、6つのサブタイプのうちこの4型(STK11変異=FGL1高発現=CPS1高発現=TMB-H/cold tumor)の群だけ異質で、ここの群は治療を分ける時代がくるかもしれませんね。ちなみにこの肺癌の4群の他にFGL1とCPS1のmRNAレベルが高い腫瘍の代表には肝細胞癌があります(Fig.5e)。免疫チェックポイント阻害剤抵抗性の非小細胞肺癌と肝細胞癌にどのような生物学的共通点があるのかちょっと想像しにくいですが、意外なところとの結びつきがあらわになって、これもまた興味をそそられる点です。

またこの文献中では各サブタイプの治療成績・長期予後がどうだったのかはあまり触れられていませんが、4群が予後不良なような印象があり、実際の所どうだったのかが気になります。

なお、この文献については最初に紹介した著者のツイートからのリンクを辿れば全文フリーで読むことができます(印刷やPDFの保存はできません)。Nature系のジャーナルではこのように著者が自分のジャーナルを宣伝するためのSharedItというフォーマットを公開して良いということになっているようです。

Nature系は著者にSharedItというフォーマットで公開していいということにしてますね。どういうカラクリなのかはよく分からないですが…https://t.co/7vPDzRRTYy

— BB (@0090bb) November 23, 2021

また、この著者は自らYoutubeで論文について解説するというサービスまでしているようです。すごい精力的な活動だ!

Lung Cancer Proteome Landscape: Phenotypic Subtypes and Targeted Combination Therapy by Lukas Orre
Lukas Orre from Karolinska Institute presenting at ICAP 2021. Read the full story in Nature Cancer https://doi.org/10.1038/s43018-021-00259-9
https://www.youtube.com/watch?v=_OG3_DNi56U

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更新日:2021-11-23 閲覧数:805 views.