レ点腫瘍学ノート

Top / 日記 / 2020年 / 04月21日

オンラインキャンサーボード一考

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会議は3密、したがって減らすべき

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で3密を避けよという通達が当地のような田舎まで広まってきて、院内の会議などにもその変化の波が押し寄せてきています。

もともと当院は働き方改革が言われ始める前から17時以降など時間外のカンファレンスなどは比較的少ない職場でしたが、COVID-19の流行が始まってからは17時以前のカンファレンスも廃止されたり見直されたりして、仕事の仕方が急速に変わってきています。

キャンサーボードという会議

もちろん無駄な会議はすべきではありませんが、必要なカンファレンスというのもあります。その1つがキャンサーボードです。がん診療連携拠点病院はその認定要件として多職種・多診療科でのキャンサーボードを行うことが義務付けられていますし、そうでなくても1人のがん患者さんの治療方針について内科医・外科医・放射線科医・病理医などが集まって検討するというのは臨床的にも教育的にも重要です。当院の場合は、乳腺・消化器・頭頸部などいくつかの領域ごとに分かれて実施しています。

互いに顔を合わせてキャンサーボードを行うのも大切ではありますが、COVID-19がいつ院内に入ってくるかわからない状況ではリスクマネジメントの観点からも狭い部屋に多数の医療者が集まるというのは避けなければなりません。必然的に、キャンサーボードの開催形態を変更する必要が出てくるわけです。

キャンサーボードは毎週あります。しかも毎週複数症例が検討されます。さて、どうやって行えば質の高い議論を顔を合わさずに開催できるのか…

ここにすでに決定した事項が1つあります。キャンサーボードをイントラネットでオンライン化するということです。しかも、かけられる予算はありません。メール、ファイル共有などを使って、できるだけ効率的に仕事を増やさずにキャンサーボードをオンライン化しなければなりません。

ここからは想像での思考訓練です

院内メーリングリストで症例を提示し、それに対してリプライを返すという方式を採用することにしました。特定のソフトウェアのインストールは必要ありませんし、パソコンに強くない人でも参加できます。

zoomなりMicrosoft teamsを使えばいいやろというご意見もあるかと思いますが、当院の医療情報部がそんな大層なソフトウェアを院内に入れてくれるとも思えないのでパスです。基本的に院内にある既存のインフラのみで対応せざるを得ません。

メールのタイトル

後から検索しやすいようにメールのタイトルのフォーマットを決めておく必要があります。ここがバラバラだと、それぞれみんなのメールフォルダの中でゴミに埋れてしまってメールが発掘できなくなります。「2020年4月◯日 消化器キャンサーボード」というタイトルを統一しておき、後から検索しやすいようにしておきます。

院内メーリングリストで症例を検討するときに参加者がみんなバラバラに意見すると収集がつかなくなります。メールの怖いところは、受信トレイの奥深くに埋れてしまうと2度と出会えなくなるか、出会えなくはないが恐ろしく検索に手間を取られるということです。したがって「3ヶ月前のあの症例」をすぐに振り返られるようにしておくということが大切です。

メールの書き出しは症例一覧

これまでは週1回決まった曜日にキャンサーボードを実施していました。今後はメーリングリスト上なので◯曜日に開催というのは決まっていないことになりますが、毎週◯曜日にメールをはじめの発信することを決めておき、これをキャンサーボードの開催日とします。

キャンサーボードの書記・司会を兼ねるのは中堅の先生です。この先生が毎週決まった曜日に前述のタイトルをつけたメールを送ります。このメールには事前に担当医から提出させた簡単な症例サマリが載っています。1週間で1スレッドにするか、1症例で1スレッドにするか、迷うところですが、当院の場合はメールが増えすぎないように1週間で1スレッドにすることにしました。この辺りは毎週のキャンサーボードの症例数に応じて各施設で決めていただければと思います。

この時に、提示された症例には通し番号を振っておきます。「2020−001」などです。

ディスカッションのルール

提示された症例に対するコメントは、新たなメールで送るのではなく「返信」の形で行います。メーリングリストのソフトウェアにもよりますが、当院で採用しているソフトの場合は返信されたメールの本文は最初のメールの下にぶら下がって表示されるという仕様になっているので、返信、返信に返信という形でディスカッションをすればあたかもBBSでやり取りしているかのように表示されます。

締め切りを決めておく

リアルに顔を合わすキャンサーボードと違ってオンラインでメーリングリスト形式で行うキャンサーボードは締め切りがありません。したがって議論がいつまで経ってもだらだらと続きがちです。ここは、何か明確な区切りで締め切りを作っておくべきでしょう。でないとキャンサーボードとしての治療方針の結論がいつまでたっても定まらず、担当医は本人や家族にいつまで経っても最終の治療方針を説明できません。

締め切りの決め方については様々な考え方があると思います。長くすれば様々な意見が出る一方で、治療方針が決まるまでに時間がかかりスピーディな臨床が行えなくなります。短くすれば思い立ってから結論が出るまでが早くなりますが、その場の勢いに左右されやすいかもしれません。もっとも、実際に会議室に集まって行うカンファレンスでは検討時間はせいぜい1症例あたり10分かそこらなので、あまり時間を長く取る必要はないかもしれません。とすれば、締め切りは長くてもせいぜい2〜3日。全員が揃ってひとしきりの意見を出せる時間的猶予さえあれば、1日でも良いかもしれません。

結論をまとめる

書記役の人が、各症例をまとめておく必要があると思います。みんながメールで思い思いの意見を投げっぱなしでは、それはキャンサーボードではなく雑談です。締め切りの時刻が来たら、書記役の人は各々の症例について「では皆さんの意見をまとめると、術前化学療法を行ったのちに切除を目指すという方針で」「この症例は手術よりもCRTにしましょう」などと、キャンサーボードとしての方針を簡単に記述した報告書を作成しましょう。要点がまとまっていれば詳細である必要はありません。

検討した症例はリスト化しておく

提示された症例には通し番号を振っておくということをはじめに述べました。検討した症例はどこかにExcelなどでリストを作っておき、ファイル共有機能を使って保存しておきます。このリストには、通し番号の他に、検討した日時、氏名、電子カルテID番号および主病名(何の臓器のがんだったのか)などを記載しておく他に、大まかな治療方針も書いておいても良いかもしれません。

リストをファイル共有で保存しておけば、しかるべき期間が経ったのちに(例えば半年後に)検討した症例がその後にどのような経過をたどったのかを参加者が各自でたどることができます。各自で症例の経過をたどることができれば、それは教育的にも有意義なことです。キャンサーボードをやった甲斐があります。

まとめ

これは、実際にこの通りに運用されている病院があるというわけではありません。あくまで、実際の会議室で行われているキャンサーボードという多診療科合同のカンファレンスをオンラインで実施するにはどうすれば良いかということをテーマに、オンラインでの仕事の仕方を想像したものです。

どこまでできるかわかりませんが、今回のCOVID-19騒動を良い機会として、効率的でありながら臨床的にも教育的にもクオリティが保たれる仕事の進め方はどのようなものかを、これからも少しづつ考えてゆきます。


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更新日:2020-04-21 閲覧数:1077 views.