ガイドラインの新しい形 living guideline
ASCOガイドラインの一部がliving guideline方式に移行するらしい。
ASCOドライバー変異陽性非小細胞肺癌ガイドラインは良いとして、living guidelineってなんぞやと思ったら、今までのように1〜2年に1回改訂されるようなトロいガイドラインはやめて、今後は新しいエビデンスが出るたびにその都度改訂する「生ガイドライン」を発行するらしい…。
living guidelineとは何か
JCOにliving guidelineについて詳しく解説した文章*1があった。ガイドライン作成の専門委員は4-6週間ごとに新規文献を拾い上げる。ガイドライン推奨を変え得るデータが出るたびに改訂案を作って委員会に諮り、承認を得られなければ前段階に戻り、承認を得れば適宜publishされる。
もともとliving guidelineが幅広く使われるようになったのはオンコロジーの領域よりもCOVID-19診療の現場のようだ。COVID-19診療は確かに、酸素療法の方法や抗ウイルス薬・ステロイド剤の使いかた、あるいはガウンやアイシールドなどの防護服からレッドゾーン・グリーンゾーンの区画整備などの様々な感染対策法に至るまで、この3年間でも様々な指針が出ては改訂されということを頻繁に繰り返してきた。あのように、一つの指針を随時必要に応じてどんどん変えてゆくというのが、living guidelineである。
進歩の早い領域はliving guidelineへ
今まででもNCCNガイドラインは年3-4回は改訂されて、日本のガイドラインとは改訂の速さが段違いではあったけれど、今後はそういう方法ではなく随時改訂という方法が当たり前になってくるのかもしれない(特に肺癌のように進歩が急速な領域では)
今後はASCOガイドラインのうち進歩の早い領域はliving guideline方式に順次移行してゆくが、そのトップバッターに選ばれたのが腫瘍学の中でも最も活発に進歩を続けるドライバー変異陽性非小細胞肺癌に対する分子標的治療だったというわけ。
ちなみにドライバー変異陰性の非小細胞肺癌は従来通りの改訂で2022年第2版となっている(それでも年2回改訂されるんだから日本のより圧倒的に改訂ペースが速いが)。同じ米国のNCCNガイドライン*2はASCOガイドラインよりさらに改訂が早く、いま見たところ2022年第6版だった。
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*1 https://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.22.02344
*2 https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/nscl.pdf
更新日:2022-12-20 閲覧数:669 views.