腫瘍内科専門医と日本専門医機構理事会
腫瘍内科を応援してくれている人たち
腫瘍内科は、絶対数の不足が目立つものの、がん診療に特化した内科として、治療だけでなく院内・院外のがん診療体制づくり(例:がんゲノム・AYA・遺伝性腫瘍)にも関わっていることが多い。アドボケートやがん教育など医療業界の外にいる人とのつながりを作るための活動をしている腫瘍内科医もいる。
一部の腫瘍内科医が他科に上から目線で接して煙たがられることもあったが、それは改善すべき点。腫瘍内科の悪いところだ。
それでも、多くの腫瘍内科医はがん患者団体(患者会)や地域行政などは自分たちのようながんの種類にとらわれず幅広い取り組みをする腫瘍内科医を必要とし、応援してくれていると考えて、腫瘍内科医たちは少ない人数でも精力的に活動してきた。患者会が、日本に腫瘍内科医を増やせ、若い世代の育成環境を整えろという声を上げて我々の活動を後押しをしてくれるのではないかという淡い期待も持っていた。
腫瘍内科医は最期の最期までがん患者と共に歩むの仕事です。緩和との連携も初期に行い。仮に緩和に移行しても、患者と腫瘍内科医の納得の同意のもと行われる必要があります。また、抗がん剤を最期まで出し続けるのが、腫瘍内科医の仕事ではありません。抗がん剤をしなくても希望を与えるのが仕事です。
— Naoto T Ueno, MD, PhD (@teamoncology) April 23, 2012
日本専門医機構理事会の議事録から
しかし日本専門医機構の6月26日や7月21日の議事録からは機構は腫瘍内科を不要と考えているのではないかと感じ取れてしまう。そして、その判断をした理事会の構成員には大学教授や医師会だけでなく患者会・がんサバイバーを代表する立場の人も含まれていたことは、驚きだった。
そもそも腫瘍内科医が少なすぎて世間に認知されていないことが原因だし、それは自分たちの力不足ゆえではあるけれど、自分たち腫瘍内科を応援してくれているのではないかと思っていた患者会の代表からそういう声が出るとは全く思っていなかったので、この日本専門医機構の理事会でなされた決定を伝え聞いたあと、周りでも大きなショックを受けて落胆したり失望している腫瘍内科医は少なくなかった。
客観的に見れば、自分たちでうぬぼれて、彼らは腫瘍内科を守り育てようという声を上げてくれる側なのではないかと勝手に期待し、勝手にショックを受けて失望しているだけの滑稽な存在だった。
あの議事録を読む限り、機構の理事たちは腫瘍内科専門医は不要と考えているとしか受け止めれないし、その理事の中にがん患者/サバイバーを名乗る人がいるということは、がん患者を代表して「腫瘍内科は要らない」と表明しているわけですからね。 https://t.co/W3RH1vsWfb
— ねこまた見習い💙стою з україною💛 (@vc_neco) December 22, 2023
暗い将来展望
この日本専門医機構の議事録を見てると、理事会では「6.サブスペシャルティ領域検討委員会」の記載の後半から明らかにJSMOだけが狙い撃ちにされてる感じがあるなあ。https://t.co/V4uZKCf4XD
— レ点🧬💉💊 (@m0370) December 20, 2023
日本専門医機構が腫瘍内科を専門医資格として認めない中で、後進たちをどうやってリクルートして育成してゆけば良いのか。立派に研修し教育して一人前の仕事ができるようになったとしても彼らに機構専門医の資格を取らせてあげることができないのだとすれば申し訳が立たないし、そういう見込みなのであれば医学生や研修医に君も腫瘍内科をやってみないかと声を掛けることすら難しくなってしまう。今後しばらく、新規の腫瘍内科の専攻医は日本全国どこでも極めて少ない状態が数年間続くのではないかと思うと、気持ちも暗くなる。
とはいえ、腫瘍内科医という仕事は生涯をかけて取り組むだけの価値のあるものだと思うし、今さらこの歳で他の仕事につくのも現実的でないので、一歩一歩できることをしてゆくしかないのだけれど。
果たして、今後この専門医制度が腫瘍内科をどのような方向に動かしてゆくのか、あるいはこのまま小さな火は消えてしまうのか、不安がないというと嘘になる。
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更新日:2023-12-22 閲覧数:3484 views.