レ点腫瘍学ノート

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1日あたり1万人のワクチン接種を成功させるのに必要な人員(妄想記事)

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4月26日に東京と大阪に国主導で大規模なワクチン接種会場を設けるというニュースが流れました。東京会場は大手町の合同庁舎を使用し、自衛官も動員して1日あたり1万人規模の接種を目指しいてるとのことです。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4816ddcbed18e1aa5ce132cdee519d71155543c3

これが成功すれば東京会場をモデルケースにして各政令指定都市や各都道府県に同様のセンターを設置し、1日1万人のワクチン接種を10カ所、20カ所と増やしてゆくことが期待できるかもしれません。接種会場が十分に増えれば1ヶ月で数百万人の接種も可能になり、イスラエルほどではないにせよイギリスなどのような流行抑制も視野に入ってきます。

1日1万人のワクチン接種をするにはどれくらいの人員が必要か(妄想)

さて、1日あたり1万人のワクチン接種というのは並大抵のプロジェクトではありません。ぼくの職場での集団接種は1日あたり300〜400人程度の接種でしたが、それでも医師だけでなく看護師や事務員を会わせると20〜30人程度を割いて実施し、事前の連絡や問診票配布からの手間暇をかければかなりのものになります。対象者のほとんどが医療従事者である病院職員接種では接種対象者の理解が良くてこれですから、高齢者を含む一般市民を対象に行う集団接種ではさらに念入りな人員配置が必要となります。

そこで、完全に空想でどれくらいの人員が必要となるのかを見積もってみることにしました。最も核になるのは筋肉注射を実際に実施する注射列ユニットですが、一番時間を取られそうなのは対象者の身元などを確認し接種記録を行う受付(受付ユニット)と、健康上の問題などで接種が行えない人ではないかどうかを確認するための事前問診を行う段階(問診ユニット)です。そして低頻度ながら一定確率で発生する救急対応のための人員(救急対応ユニット)も必要です。アナフィラキシーが稀であっても、迷走神経反射やその他の気分不良なども含めれば、1万人も注射を行えばそれなりの数の応急処置が必要な人が登場します。

まず注射列ユニットがどの程度必要なのかを手がかりに、必要人数を試算してみることにしました。

1日あたり1万人を9:00から19:00までの10時間で接種するとしてもピーク時間帯に集中するので人員を均等に配置することはできないのかもしれませんが、その辺は事前予約システムでなんとか対応して貰うということで…

注射列ユニット

注射自体は数秒で終わりますが、注射を行うために腕まくりをしてもらい適切な姿勢を取ってもらうための事前誘導や、バイアルから注射器に薬液を詰める作業が必要です。注射を行う医師または看護師2人につき、薬剤調製を行う看護師または薬剤師が1人つき、さらに注射前の姿勢をとらせるためと注射後の誘導を行うための誘導スタッフが2人の合計5人で1チームとします。この1チームの注射列で1時間40人をさばくとし、1時間あたり1200人を流すには30列が必要です。1時間ぶっつづけで注射をするとさすがに指の筋肉が攣ってしまうので40分労働20分休憩とすると30列に対して45チームが必要ですが、少し余裕を見て50チームの5時間勤務(2交代)で合計100チーム、合計500人とします。

問診ユニット

注射列ユニットが500人の体制で1時間あたり1200人のペースでの注射をさばいてくれるとなると、事前の受付ユニットと問診ユニットはそれに合わせて一定のペースで来場者を注射列に誘導しなければなりません。

問診票は事前にインターネットや郵送などで配布しておき、問診ユニットではその確認を主にすることにしますが、それでも色々と不備があったり当日に質問が出てきたりして問診が滞ることも考えられるでしょう。事務員1人と看護師1人の問診で1列あたり30人/時というのは少し厳しい見積もりかも知れませんが、さらに1列あたり2人の誘導スタッフを合わせた4人チームとして、40列で1200人/時の人を注射列ユニットに案内できるように業務にあたることにします。

40列50分勤務10分休憩で50チーム×2交代にして、400人の問診ユニットとします。

受付ユニット

受付ユニットは問診よりも前の段階で、来場者の住所氏名確認を行うほか接種記録を付ける作業にあたります。2回目接種の場合は1回目接種から何日経過しているのか(理想的には3週間で多少のズレや遅れは許容されますが、1回目接種から数日しか経っていないようなことが起こらないようにしなければなりません)。ワクチン接種券と本人確認ができる書類を確認し、接種済みの証明書を交付するか接種券に押印するかなどの事務的な手続きをします。

ここは受付窓口の人員もさることながら誘導スタッフの人数が必要です。受付事務員2人で60人/時を受付するとして、これが20列必要です。事務員2人を30チーム×2交代、誘導スタッフは100人程度は必要かも知れません。

救急対応ユニット

救急対応ユニットは人数としてはたくさんは必要ありません。ただし、ワクチンの急性期の副反応が起こった場合には迅速な対応を行い、入院などの治療が必要な場合は後方病院に搬送するための体制を整えておかなければなりません。

現地に救急搬送用の救急車と救急隊も待機しておいてもらい、また救急担当医師と看護師が数人は必要です。ひとまずDMATでの3チーム程度を見積もることにします。

その他のスタッフ

ここに挙げたのは現地のワクチン接種会場で働くスタッフですが、その他に専用の受付コールセンター(電話対応窓口)が必要です。1日あたり1万人、楽観的に見積もって大部分の人がインターネットで受付してくれたとしても電話の数は相当なものになります。コールセンターの人員が必要です。それからインターネット受付システムなども必要ですが、これはどれくらいの人員が必要なのかは簡単には想像つかないですね…。

まとめ

1日1万人ワクチン接種の大規模センターを作ろうと思ったらどれくらい人員がいるか勝手に妄想してみたけど、だいたいこんな感じかしら。これは1000人規模の専門チームが必要だな。医師にワクチン接種させていては到底足りない。看護師数が鍵になりそう。オリンピックに500人も出してる場合じゃねーぞ… pic.twitter.com/GwsPahaCXg

— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) April 29, 2021

上記を合わせると、医師・看護師・薬剤師などの医療職で400人あまり、事務員や誘導スタッフが500〜600人、救急隊と後方支援病院が必要で、総勢は1000人を軽く超える専用部隊になります。しかも1日だけでなくこの大規模ワクチン接種会場を毎日恒常的に設けるとなると、もはやこれは職員数1000人を備えた病院を作るのに近い人員が必要です(医療職400人を含む職員1000人の病院というと200〜400床規模の中堅病院に相当します)。

もちろん会場も相当な広さが要求されます。救護室、経過観察時間の待機を行うスペース、受付待ちの列をさばくスペースも必要ですし、そこに1万人の人を運ぶ公共交通機関や会場のトイレ・昼食場所などのアメニティなども必要です。

これはプロジェクトXの番組で取り上げられそうな巨大な国家プロジェクトですね。新型コロナウイルス感染症の流行を抑えるのにワクチン接種をできるだけ早く進めるのが切り札であることは間違いないので、ぜひ頑張って成功させて欲しいところです。

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更新日:2021-04-29 閲覧数:863 views.