悪性腫瘍のMSI・MMR検査では同意書は必要か問題
免疫チェックポイント阻害薬適応判定のためのマイクロサテライト不安定性検査(MSI検査)を行う際に、これがリンチ症候群のスクリーニングにもなりうることを説明し同意を得たことを診療録に記載することが大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス第3版2016年11月(日本臨床腫瘍学会編)に記載されている。このために、日本遺伝性腫瘍学会がMSI検査のための説明文書・同意書を作成し、これらを元に各医療機関が同意取得を行いやすくするという取り組みを行っていた。
一方で、MSI検査やMMR検査はその後一層免疫チェックポイント阻害剤の治療効果予測としての用途で検査が普及している。しかしリンチ症候群に伴う腫瘍が悪性腫瘍全体に占める割合は高くなく、 悪性腫瘍罹患者におけるリンチ症候群の割合は1%程度と報告されていることや、臨床所見などから リンチ症候群が積極的に疑われない場合にまでリンチ症候群に関する詳細な理解を求められることは
患者にとって過剰な負担とも考えられるという観点から、通常の医療行為としての説明や診療録記載は必要であるものの、(ルーチンに)リンチ症候群に対する遺伝学的検査前に求められる同意取得は必要ないという見解を日本遺伝性腫瘍学会が公開している。
https://jsht-info.jp/wp/wp-content/uploads/2023/09/28e3da4a24e0e3a04aab229839adf7c2.pdf
これについては大腸がん診療のアクティビティが非常に高い大阪急性期総合医療センターもそのウェブサイト上でコメントを発行しており、「悪性腫瘍に対するMSI検査やMMR検査では同意書は要らない(ただし、患者に検査を実施することの説明と同意はカルテに残しておく必要がある)」と特大フォントで記載をしている。
MSI検査がICIのコンパニオン検査として実施されるようになるにつれ、やたらに数が多くなってしまったルーチンの事前説明に人的リソースを割くよりは、事後にMSI検査やMMR検査で陽性の結果を得たケースを一例一例しっかりケアすることに重点をシフトするほうが、本来の遺伝性腫瘍患者への対応の密度を向上させることができるという判断もあるのだろうかと推測される。
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更新日:2024-04-13 閲覧数:677 views.