レ点腫瘍学ノート

Top日記2026年3月23日

学会スライド撮影解禁問題2026年版

JSMO 学会 SNS

JSMO26からOral Sessionも解禁に

2年前に学会スライドの撮影・SNS投稿解禁問題という記事を書きました。あの記事を書いた時点では、JSMOがSNSセッション限定でスライド撮影を許可し始めた段階でしたが、その後の動きがなかなか面白いので、2026年版として状況をまとめ直してみます。

学会スライドの撮影・SNS投稿解禁問題 - レ点腫瘍学ノート
学会 SNS 学術集会のスライド撮影は日本のほとんどの医学系学会で禁止されている。ましてや、その画像を個人のブログやSNSにアップロードするなんてもってのほかという風潮である。しかし、最近はその風潮にも少し変化が見えてきている。スライド公開で先行する海外学会日本国内で学会のスライド撮影を認めている学会日本癌学会日本病理学会

ちょうど今週(2026年3月26〜28日)、横浜パシフィコでJSMO2026(第23回日本臨床腫瘍学会学術集会)が開催されます。今回から一般演題のOral SessionPresidential Sessionでもスライド撮影とSNS投稿が許可されることになりました。日本の臨床系学会としてはかなり大きな一歩だと思います。

スライド撮影・SNS投稿についてのご案内|第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)
https://www.congre.co.jp/jsmo2026/sns.html

JSMOのSNSポリシーはこの2年でずいぶん変わった

前の記事では、JSMO2024(2024年2月)の時点で、広報委員会企画のSNSシンポジウムなど一部の委員会企画セッションに限り撮影・投稿が解禁されたことを書きました。一般演題はもちろん、通常のシンポジウムでさえも対象外でしたから、解禁されたとはいえ非常に限定的な運用でした。

それがJSMO2025(2025年、神戸)では対象が大幅に広がります。シンポジウム(SY・PSY)や海外・国内学会との合同シンポジウム、委員会企画(CP)、医学生・研修医のための腫瘍内科セミナーが対象となり、公式ハッシュタグ #JSMO25 のもとでXへの投稿の制約はずいぶんと軽減されました。学会の重要な企画セッションの内容がリアルタイムでXに流れるようになったわけです(ただし#JSMO25 はライブ配信演題が非常に少なく、やや不便という問題がありました)。

そしてJSMO2026では、さらに一般演題のPresidential Session(PS)とOral Session(O)が対象に加わりました。日本の臨床腫瘍学会で「一般演題の口演発表のスライドを撮影してSNSに投稿してよい」というルールになったのは、かなり大きな動きではないでしょうか。

スライド撮影・SNS投稿についてのご案内|第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)
https://www.congre.co.jp/jsmo2026/sns.html

JSMO2026のルール:何が許可されて何が禁止か

整理すると、今年のJSMO2026でスライド撮影・SNS投稿が許可されるセッションは次の通りです。JSMO2025と比べて一般演題のうちのOral Session(O)が許可範囲に加わったのが変更点となっています。

逆に対象外となるセッションも明示されています。「Highlight of the day」「Meet the Experts」、Mini Oral、Poster Session、共催セミナー、そしてペイシェント・アドボケイト・プログラム(PAP)は今回も許可されていません。Highlight of the dayやMeet the Expertsはエキスパートが限られた空間で率直な意見を交わせる場という性質がありますし、共催セミナーは製薬企業の絡む利益相反や広告規制の問題もあります。Poster SessionはMini Oralとともに演者が直接議論できる場なのでいずれは解禁されて欲しいところですが、ケースレポートなどを扱うことも多いため、個人情報保護の観点から慎重なのでしょう。

昨年同様に重要なのは、DO NOT POSTマークの存在です。解禁対象のセッションであっても、演者が自分のスライドに「DO NOT POST」と表示すれば、そのスライドは撮影・投稿が禁止されます。また個別の演題で撮影禁止となっている演題もあります(例として、抄録を見ると早期開発セッションのうち企業からの登壇者など)。つまり全体としては「許可が原則」でも、演者個人が特定の情報(未発表データ、患者情報を含む図表など)を守りたい場合に選択的に非公開にできる仕組みです。このオプトアウト方式は、全面解禁と全面禁止の中間を取る現実的な着地点だと思います。

国内他学会の状

JSMOの取り組みを前進と評価したいところですが、他の国内学会の状況はどうなっているのでしょうか。

日本癌学会(Japanese Cancer Association)は2023年の第82回総会からすでに全演題を対象にSNS解禁に踏み切っています。しかも当初から「希望者は許可する」という形ではなく、演題登録の際に「スライド写真撮影とSNS投稿に同意すること」を必須条件とするという、かなり強い姿勢です。どうしても撮影・投稿されたくないスライドがあれば「DO NOT POST」と記載することで対応できますが、基本は全スライドが撮影・投稿の対象になります。この方針は2026年総会でも変わっておらず、継続しています。

日本病理学会も2024年総会に同様の方式を採用しました。原則として、発表者が拒否しない限りはスライド撮影やSNS投稿を認めるという方式です。ただし2026年総会の開催概要を見たところ、スライド撮影やSNS投稿については可とも不可とも記載が見つけられませんでした。

日本癌学会や日本病理学会は基礎・病理研究の色合いが強く、臨床情報(患者情報を含む症例)を扱う頻度が純粋臨床系の学会よりも相対的に低いという事情があります。臨床情報に個人情報保護の問題が絡みやすいJSMOとはやや状況が違うことは考慮すべきです。

日本癌治療学会も2024年秋の総会から、スライド撮影とSNS投稿を全面解禁しています。大会長の強いバックアップがあったと聞いていますが、一気に大幅な解禁に踏み切って業界が勢い付いたのは確かです。

日本循環器学会は時系列でいえばスライド撮影に関する取り組みの国内医学系学会の先駆者です。2019年の第83回学術集会(パシフィコ横浜)で、国内初とも言われるライブツイートを実施しました。当時の公式Twitterアカウントが学術集会の内容をリアルタイムで発信し、インプレッションは期間中77万超、フォロワーが約2倍に増えたという話が残っています。アンバサダーにのみ撮影を認める方式や、ツイートごとにキーワードをつけることを義務付ける方式など、様々な試みが日本循環器学会から始まっているのは確かです。ただし、毎年微妙な要件の変更があり、試行錯誤を現在も継続されているようです。

海外との比較:ASCOとESMOは意外とポリシーが違う

海外学会については前の記事でも触れましたが、ASCOとESMOでも多少のアプローチが異なります。

ASCOはSNS利用に非常に積極的で、参加者によるライブツイートを奨励しています。年次総会では会期中に数万件ものポストが飛び交うという規模で、学術コミュニティのリアルタイム共有文化として完全に定着しています。著作権はASCOに帰属するという整理になっており、学会としてコンテンツを積極的に公開・販売もしています。

ESMOも公式のハッシュタグ利用や内容共有を奨励しているので、非常に活発なSNS上の議論が行われています。著者が自分の演題を自分でSNSに上げて、そのコメント欄で質疑応答が見られるなど、新たな時代の学術発表の形を見ることができます。いつか日本も、ASCOやESMOのような活気あるディスカッションをSNS上で行えるようになりたいものです。

今後の方向性

JSMO2026でOral Sessionが対象に加わったことで、学術集会の主要な演題発表のほとんどが撮影・投稿可能になりました。来年以降、残るMini OralとPoster Sessionが将来的にどう扱われるかが一つの注目点です。

日本癌学会方式のような「全演題への一括適用」をJSMOも将来的に検討するかどうかは、JSMOが扱う臨床情報の性質を考えると慎重にならざるを得ない部分があります。患者の実際の症例データや未発表の臨床試験の中間解析などを含む発表も多い学会ですから、一概に「全部解禁」とはいきにくいでしょう。DO NOT POSTによる個別対応という仕組みを維持しながら、対象セッションを着実に広げていくというのが当面の現実的な路線だと思います。

この2年間で日本の腫瘍学関連学会のSNSポリシーはずいぶん変わりました。今年のJSMO2026での #JSMO26 の盛り上がりがどうなるか、楽しみに見ていようと思います。

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更新日:2026-03-23 閲覧数:1770 views.