学会スライド撮影解禁問題2026年版
JSMO26からOral Sessionも解禁に:学会スライド撮影・SNS投稿ルールの2026年版まとめ
2年前に学会スライドの撮影・SNS投稿解禁問題という記事を書きました。あの記事を書いた時点では、JSMOがSNSセッション限定でスライド撮影を許可し始めた段階でしたが、その後の動きがなかなか面白いので、2026年版として状況をまとめ直してみます。
ちょうど今週(2026年3月26〜28日)、横浜パシフィコでJSMO2026(第23回日本臨床腫瘍学会学術集会)が開催されます。今回から一般演題のOral SessionやPresidential Sessionでもスライド撮影とSNS投稿が許可されることになりました。日本の臨床学会としてはかなり大きな一歩だと思います。
JSMOのSNSポリシーはこの2年でずいぶん変わった
前の記事では、JSMO2024(2024年2月)の時点で、広報委員会企画のSNSシンポジウムなど一部の委員会企画セッションに限り撮影・投稿が解禁されたことを書きました。一般演題はもちろん、通常のシンポジウムでさえも対象外でしたから、解禁されたとはいえ非常に限定的な運用でした。
それがJSMO2025(2025年、神戸)では対象が大幅に広がります。シンポジウム(SY・PSY)や海外・国内学会との合同シンポジウム、委員会企画(CP)、医学生・研修医のための腫瘍内科セミナーが対象となり、公式ハッシュタグ #JSMO25 のもとでXへの投稿もずいぶん増えました。学会の重要な企画セッションの内容がリアルタイムでXに流れるようになったわけです。
そしてJSMO2026では、さらに一般演題のPresidential Session(PS)とOral Session(O)が対象に加わりました。日本の臨床腫瘍学会で「一般演題の口演発表のスライドを撮影してSNSに投稿してよい」というルールになったのは、ぼくの記憶ではこれが初めてではないでしょうか。学会の空気感がXのタイムラインに流れ込んでくる、そういう体験が今年からようやく可能になるわけです。
JSMO2026のルール:何が許可されて何が禁止か
整理すると、今年のJSMO2026でスライド撮影・SNS投稿が許可されるセッションは次の通りです。
- 会長企画シンポジウム(PSY)・シンポジウム(SY)
- 海外・国内学会との合同シンポジウム
- 委員会企画(CP)
- 医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー
- Presidential Session(PS)
- Oral Session(O)
逆に対象外となるセッションも明示されています。「Highlight of the day」「Meet the Experts」、Mini Oral、Poster Session、共催セミナー、そしてペイシェント・アドボケイト・プログラム(PAP)は今回も許可されていません。
この区別、なんとなく納得感はありますね。Highlight of the dayやMeet the Expertsはエキスパートが限られた空間で率直な意見を交わせる場という性質がありますし、共催セミナーは製薬企業の絡む利益相反の問題もあります。Poster SessionはMini Oralとともに演者が直接議論できる場ですが、参加者が近距離で個別対応することが多いため、個人情報保護の観点から慎重なのでしょう。
もう一つ重要なのが「DO NOT POST」マークの存在です。解禁対象のセッションであっても、演者が自分のスライドに「DO NOT POST」と表示すれば、そのスライドは撮影・投稿が禁止されます。つまり全体としては「許可が原則」でも、演者個人が特定の情報(未発表データ、患者情報を含む図表など)を守りたい場合に選択的に非公開にできる仕組みです。このオプトアウト方式は、全面解禁と全面禁止の中間を取る現実的な着地点だと思います。
公式ハッシュタグは #JSMO26 です。
国内他学会の状況:癌学会はもっと進んでいる
JSMOの取り組みを前進と評価したいところですが、実は他の国内学会と比べると、まだ慎重なほうです。
日本癌学会(Japanese Cancer Association)は2023年の第82回総会からすでに全演題を対象にSNS解禁に踏み切っています。しかも「希望者は許可する」という形ではなく、演題登録の際に「スライド写真撮影とSNS投稿に同意すること」を必須条件とするという、かなり強い姿勢です。どうしても撮影・投稿されたくないスライドがあれば「DO NOT POST」と記載することで対応できますが、基本は全スライドが撮影・投稿の対象になります。この方針は2024年総会でも変わっておらず、継続しています。
日本病理学会も2024年総会から同様の方式を採用しました。演題登録時に全員が同意する形式です。
ただし、癌学会や病理学会は基礎・病理研究の色合いが強く、臨床情報(患者情報を含む症例)を扱う頻度が純粋臨床系の学会よりも相対的に低いという事情があります。臨床情報に個人情報保護の問題が絡みやすいJSMOとはやや状況が違うことは、公平のために述べておきます。
日本循環器学会は時系列でいえば国内医学系学会の先駆者です。2019年の第83回学術集会(パシフィコ横浜)で、国内初とも言われるライブツイートを実施しました。当時の公式Twitterアカウントが学術集会の内容をリアルタイムで発信し、インプレッションは期間中77万超、フォロワーが約2倍に増えたという話が残っています。2024年の第88回学術集会では、演題に★印が付いたものに限りスライド撮影・SNS投稿を解禁するという部分解禁方式を採用しました。
海外との比較:ASCOとESMOは意外とポリシーが違う
海外学会については前の記事でも触れましたが、ASCOとESMOでは実はかなりアプローチが異なります。
ASCOはSNS利用に非常に積極的で、参加者によるライブツイートを奨励しています。年次総会では会期中に数万件ものポストが飛び交うという規模で、学術コミュニティのリアルタイム共有文化として完全に定着しています。著作権はASCOに帰属するという整理になっており、学会としてコンテンツを積極的に公開・販売もしています。
ESMOはといえば、意外に著作権保護寄りの姿勢をとっています。一般参加者によるセッション内のスライド撮影や録画は原則禁止で、認定プレス向けに非商業的個人利用の範囲で例外的に許可するという形です。公式のハッシュタグ利用や内容共有は奨励しているので、「体験のシェア」はOKでも「スライドのシェア」はNGという線引きです。ASCOと比べると厳格な姿勢で、これは以前の記事を書いた時点でも感じた通りです。
JSMOのオプトアウト方式(DO NOT POSTがなければ投稿可)はASCOに近い思想ですが、まだ対象セッションが限定されている点でASCOほどオープンではありません。ESMOよりは明らかに解放的です。
今後の方向性
JSMO2026でOral Sessionが対象に加わったことで、学術集会の主要な演題発表のほとんどが撮影・投稿可能になりました。残るMini OralとPoster Sessionを将来的にどう扱うかが一つの注目点です。Poster SessionはOral Sessionよりも演者と参加者の距離が近く、慎重な議論が必要なデータを扱うケースもあることから、すぐに全面解禁というわけにはいかないでしょう。一方、Mini OralはOral Sessionと発表形式が似ているため、対象化が検討される余地はあるかもしれません。
日本癌学会方式のような「全演題への一括適用」をJSMOも将来的に検討するかどうかは、JSMOが扱う臨床情報の性質を考えると慎重にならざるを得ない部分があります。患者の実際の症例データや未発表の臨床試験の中間解析などを含む発表も多い学会ですから、一概に「全部解禁」とはいきにくいでしょう。DO NOT POSTによる個別対応という仕組みを維持しながら、対象セッションを着実に広げていくというのが当面の現実的な路線だと思います。
いずれにせよ、この2年間で日本の腫瘍学関連学会のSNSポリシーはずいぶん変わりました。今年のJSMO2026での #JSMO26 の盛り上がりがどうなるか、楽しみに見ていようと思います。
関連記事
- 学会スライドの撮影・SNS投稿解禁問題(2024年3月)
この記事に対するコメント
このページには、まだコメントはありません。
更新日:2026-03-23 閲覧数:40 views.