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BRCA遺伝子検査の注意点
オラパリブなどのPARP阻害剤を使用するにあたってBRCA遺伝子検査を行う機会が増えているが、これは乳癌治療の選択のために行う検査であると同時に遺伝性疾患の発見・診断につながる可能性があることに留意する必要がある。
問診において配慮すべきこと
- プライバシーに配慮した部屋で問診を実施する
- 検査実施については、患者本人だけでなく血縁者の意向も確認する
- 同席者をどうするか(子などの血縁者を同席させるかいなか)を事前に確認する
- 決断を急がせない、十分に納得してから検査を受ける
- 現行では結果が判明するには3週間程度かかるため、治療開始のスケジュールを考慮すること
- 必要に応じて遺伝医療の専門家に相談ができるよう紹介する制度を整えておく必要がある
- 遺伝情報は高度な個人情報であるため院内でも取扱いについての取り決めをしておく必要がある(通常の電子カルテに職員が誰でも閲覧できる状態で記載するのは好ましくない)
特に患者に理解しておいていただくべきこと
- BRCA遺伝子変異は大多数が両親のいずれかから受け継いだものである
- 遺伝性疾患(HBOC)が判明する検査であること
- 検査結果は血縁関係にある家族にも影響することがある
- 性別に関係なく、患者の兄弟姉妹、患者の子が同じ遺伝子異常を受け継いでいる可能性はそれぞれ50%である
- 遺伝情報は生涯変わらず血縁者にも関わる個人情報である
- 遺伝子変異が陽性であっても、この遺伝子異常を治す方法は現代の医学ではない
- BRCA遺伝子変異を受け継いでいる血縁者は通常よりがんになる可能性が高い(ただし全員ががんになるわけではないし、BRCA遺伝子変異がなくてもがんになることもある)
慎重な理解が必要なポイント
- 検査を受けるどうかは主治医ではなく患者とその家族が決めるべきである。
- BRCA遺伝子変異が陽性であった場合に兄弟姉妹などの血縁者にも検査を受けるように勧めるかどうかについても一概に言える答えはなく、個々の場合に応じて患者が自分自身で決める必要がある。ただし、本人の判断能力を考慮すると未成年のうちに検査を実施することは推奨されない(成年後に本人が決定すべき)。患者の血縁者も希望あれば専門施設で検査を行うことができるが、その場合は保険診療外であり検査費用は自己負担になる。
- 就職や保険加入について遺伝情報を告知する義務はない。ただし米国では遺伝情報に基づいて雇用や保険加入において差別することを明確に禁じる法律があるが、日本ではこの差別を禁じる法律はない(2018年9月時点)。結婚や出産への影響は明確な答えはない(注釈:本来はこれらの差別はあってはならないと考えるが、全ての人にこの考え方が受け入れられるとは言えないのが現状である)。
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更新日:2018-09-07 閲覧数:1410 views.