末梢血で行う大腸癌のRAS遺伝子変異検査
2019年8月にシスメックス社のOncoBEAM RAS CRCキットが製造販売承認を受けました。リキッドバイオプシーによる大腸がんのRAS遺伝子変異検査に用いる体外診断用医薬品としては初の製造販売承認となります。製造販売承認を得てからも保険承認となるまで長くタイムラグがありましたが、2020年8月1日にOncoBEAM RAS CRCキットが保険承認され、ようやく保険診療でも末梢血でのRAS検査が行えるようになりました。
KRAS、NRASの変異を検出しますが、HRASやBRAFは対象外になります(検出対象変異の一覧はこちら)。
測定の原理
BEAMing法とはBeads(ビーズ)、Emulsion(エマルジョン)、Amplification(増幅)、Magnetics(磁気)の略で、ビーズに付着させた目的領域のDNAをビーズ上で増幅させた後に野生型RASと変異型RASのいずれかを特異的に標識する蛍光プローブを用いて変異型DNAを検出する原理です。蛍光プローブで標識されたビーズはフローサイトメトリーにて分離解析されます。
検査の適用と精度
大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第4版(2019年12月)でもRAS検査法の1つとして推奨されています。ほかには組織切片を使ったRASKET-Bと、NGSによる方法があるが、おおむね検査の結果一致率は保たれると考えられます。
ctDNAが末梢血に十分ない患者では本検査を行っても野生型RASと判定される可能性が高まる。特に病変が極めて微小である、有効な化学療法を継続中であるなどのほか、肺転移のみの症例でもctDNAの検出率が低いと言われています。
検体量 | 20.0mL |
保存方法 | 室温 |
所要日数 | 5〜7日 |
保険点数 | 7500点 |
検査方法 | BEAMing法 |
検査費用
- 専用採血管(Streck採血管)が6本で17,000円(税抜)ほどかかり、1回の検査で2本の採血管を使用するので5,700円(税抜)がかかる
- 検査料は医療機関によって異なるが65,000〜70,000円(税抜)程度かかる
- 採血管+検査料+消費税で保険点数7500点を容易に超えてしまうので、検査は基本的に赤字になることが多い(これは既存のRASKET-BによるRAS/BRAF検査も同様に赤字になっている施設が多いと思われる)
- 治療開始前には組織標本でのRAS/BRAF検査が第一選択肢と考えられ、末梢血での検査を行っていた場合には詳記の記載を求められる可能性がある。
- 組織標本でのRAS/BRAF検査と末梢血でのRAS検査を同月に行った場合は片方しか算定できない。
- 従来の組織標本で行っていたRAS検査の最大の違いは複数回の検査が可能となること。従来は生涯で1度しか実施できませんでしたが、今後は複数回の検査が可能となるため、抗EGFR抗体の利チャレンジをするかどうかを判定するために複数回の検査を行うことができます。
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更新日:2020-09-02 閲覧数:1919 views.