メトホルミン
メトホルミンと腫瘍の関連について集めるページです。
メトホルミンと非小細胞肺癌
メトホルミンとEGFR-TKIの併用第2相試験
IIIB〜IV期のEGFR変異陽性の非小細胞肺癌患者に対して、ゲフィチニブ・エルロチニブ・アファチニブのいずれかとメトホルミンを併用するとPFSが有意に延長しました(9.9→13.1ヶ月、HR 0.60)。また副次的解析でOSも有意に延長した(17.5→31.7ヶ月)。メキシコのオープンラベル、ランダム化第2相試験です。
![Effect of Metformin Plus Tyrosine Kinase Inhibitors Compared With Tyrosine Kinase Inhibitors Alone in Patients With Epidermal Growth Factor Receptor-Mutated Lung Adenocarcinoma: A Phase 2 Randomized Clinical Trial - PubMed](cache/ogp/4e45444488a62597d666485c09dfdf35.jpg)
OCOG-ALMERA試験
こちらはメトホルミンを併用したがために治療効果が非常に悪化してしまった残念な試験。1yPFSは63→35%、1yOSは85→47%に悪化、AEは25→54%に増加。試験実施者もガッカリの、どうしてこうなった感が半端ない。これ見ると糖尿病治療中に発癌した患者ではメトホルミンをやめさせなければならないんじゃないかと心配になるレベルでOSやPFSが落ちてるので…
![Metformin in Combination With Chemoradiotherapy in Locally Advanced Non–Small Cell Lung Cancer](cache/ogp/b9603ec65298d282d214f0c05ea71bc9.png)
考察を見てもメトホルミン群で毒性が増強した機序は書かれてないな。しかしメトホルミン群でCRTがプロトコル通りできた人が7割にとどまり、感染やら食道炎やら頻発しているし血球減少が強く出ている(意外に低血糖が少ない)。メトホルミンって骨髄機能に影響するんだっけ?
考察の書き始めが「ぼくはただ、皆に喜んで貰おうと思っていただけなのに、なんでこうなってしまったんだろう…」という筆者の落胆が目に浮かぶようで、こちらまで悲しくなってくる。涙でそう…。 pic.twitter.com/lqYliBRTfu
— レ点🧬 (@m0370) October 9, 2021
メトホルミンと悪性リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と濾胞性リンパ腫(FL)に対して、メトホルミンの使用の有無で event free survival、lymphoma-specific survival、overall survivalに差があるかの検討を行った後方視的コホート研究では、それぞれ有意な差を認めませんでした。
![Impact of metformin use on the outcomes of newly diagnosed diffuse large B-cell lymphoma and follicular lymphoma - PubMed](cache/ogp/5fe1353ec544836a7f0e6c28f049e972.jpg)
(2020年9月20日追記)
メトホルミンと前立腺癌
メトホルミンと前立腺癌の関係では、メトホルミン使用患者とそうでない患者で高リスク前立腺癌の生存に差がある可能性があることがpopulation-based後方視的解析で指摘されていました。
![Statins With or Without Metformin Are Associated With Increased Survival in Patients With High‑Risk Prostate Cancer - The ASCO Post](cache/ogp/e76ca55d758d414e0a48b7a7a613a386.jpg)
MANSMED試験(ESMO2020でプレリミナリー)
![MANSMED試験](img/bbd9beb08b-prostate1.jpg)
そして、ESMO2020では高リスク前立腺癌患者に対してメトホルミンの使用有無をランダム化して割り付けるMANSMED試験のプレリミナリーな結果が発表されました。これによると、抗アンドロゲン療法を受ける前立腺癌がありメトホルミンの投与を受けていない患者に対して標準治療に加えてメトホルミン850mgを投与する群と標準治療のみを行う群にわけてTTP(time to progression)などを比較しています。
その結果では、去勢抵抗性に至るまでの期間が標準治療群は20ヶ月だったのに対して標準治療+メトホルミンの群は29ヶ月であったとのことです。高度に転移を有する症例では効果が乏しく、局所進行例などで相対的にその恩恵が大きかったとのこと。まだimmatureな結果ですので、続報に期待です。
![ESMO Virtual Congress 2020: Repurposing Metformin as Anticancer Drug: Preliminary Results of Randomized Controlled Trial in Advanced Prostate Cancer (MANSMED)](cache/ogp/f3ebebb5fb297cb89a963b70e2df072e.jpg)
メトホルミンと乳癌
MA.32試験
早期乳癌の術後にメトホルミンを服用することで再発を抑制できるのではないかという大規模なMA.32試験が3000人以上の患者を対象に実施されています。その結果はSABCS2021で発表され、2022年5月にJAMAに掲載されました。
![Effect of Metformin vs Placebo on Invasive Disease–Free Survival in Breast Cancer](cache/ogp/b9026f2fb3e7874938e902b9c012fcf0.png)
この結果では、HR陽性の乳癌患者ではメトホルミン850mgを1日2回服用しても早期乳癌術後のDFSやOSを改善することはできなかったようです。なお探索的研究として実施されたHER2陽性乳癌ではわずかながらカプランマイヤー曲線でプラセボ群よりもメトホルミン群が上を行っています。
ちなみに糖尿病患者は除外されているので、本研究の結果を糖尿病を有する乳癌患者に外挿してはいかんと考察でクギを刺しています。
メトホルミンがマルチキナーゼ阻害剤の皮膚毒性を軽減する?
これ本当おもしろいな。ソラフェニブは超絶手足皮膚毒性に泣かされがちだけど、メトホルミン・アトルバスタチンと併用して800→600mgに減量して皮膚毒性や肝障害を減らせるという第1相。AUCが下がって抗腫瘍効果が長期的に損なわれないのかが心配ではあるが…。 https://t.co/kvOhDNyZMZ
— レ点🧬 (@m0370) March 3, 2022
ソラフェニブは超絶手足皮膚毒性に泣かされがちですが、メトホルミン・アトルバスタチンと併用して800→600mgに減量して皮膚毒性や肝障害を減らせるという第1相。AUCが下がって抗腫瘍効果が長期的に損なわれないのかが心配ですが…。
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更新日:2022-05-25 閲覧数:1415 views.