英語文献からの引用や転載の権利関係
引用とは?転載とは?
引用と転載は似ているが異なるものである。著作権法上は、私的使用目的に限らず「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる場合には、無断で他人の著作物(公表されたもの)を引用することができる」とされている。正当な目的で慣行的に認められる範囲であれば、出典を明記してその著作物を引用することができる。
色んな論文のfigureをTwitterに貼って色々みんなで討論できたら楽しいなと思うけど、それはOKなんだろか?先日のツイートのようにcreative commonsを謳うOA誌ならともかく契約施設でないと読めないジャーナルの場合も引用の範囲ならOK?
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) September 11, 2019
一方で「転載」とは、自身の著作物の「従たる範囲を超え」て、他人の著作物を複製することである。他人のブログや著作物を転載してそれに対して自分の独自の記述がほとんどない場合、つまり転載物が主で独自の内容が従であれば、それは引用ではなく転載となりNGである。本文であれば主と従はわかりやすいが、図表の場合は主か従かの判断は難しくなる。どちらかというと図表の無断転載は基本的にアウトと考える人が多いようである。個人ブログなどに論文のFigureなどを掲載している場合は注意が必要。
ところで、転載と引用は著作権法的にも違っていて、転載ではなくれっきとした引用であれば合法ということなんだけど、日本と海外でその辺は整合性が取れているんだろうか?(日本で合法でも海外のjournal出版元から見れば違法とかは無いのだろうか?)
論文のFigureやTableの引用は認められるか
研究者向けSNSのResearchGateが商業論文PDFを共有したことで米国化学会とエルゼビアに訴訟を起こされた例がある(http://current.ndl.go.jp/node/36785)。本文の一部の引用は許容されることが多いが、図表の引用や、本文であっても引用の範囲を超えた転載は訴訟まで行かないにしてもトラブルに繋がる可能性がある。
前述の通り、法的にも権利が認められている引用の場合は引用内容は従で独自内容が主であることが重要であり、引用ばかりで独自の内容がない場合は引用とみなされず無断転載となり得る。Figureについては製薬企業のパンフレットや医学書籍出版社の出版物に使用する場合は印刷部数に応じた許諾料を支払っているとのこと。
例えばメーカーのパンフにある図表に出典が記載されていますがすべて転載許諾(料)を取って(払って)いまして、図表○個以上、☆万部印刷で△万円等となってます(本文は対象外の場合が多い)。これがweb転載だと倍になったり、学術文献(図書、webなど)に転載であれば大幅値下げされたりします。
— уон (@Yoh_tw) September 11, 2019
「How Can I Share It?」という論文DOIを検索すると引用方法のポリシーがわかるサイトがある。ただし対応している出版社が限られている。
howcanishareit.com
非営利ブログは許容されてもいいと思うのですが、あとあと問題になると不安が残りますよね。ちなみに「How Can I Share It?」というサイトで論文doiを検索すると引用方法のポリシーがわかるそうです。エルゼビアやシュプリンガーなどは対応してますがJCOは非対応でした。https://t.co/0XvNZg6lnQ
— уон (@Yoh_tw) September 11, 2019
Open Access JournalではCreative Commonsで認められるケースもある
論文のfigureをブログやTwitterに勝手に転載するのって(黙認されていたとしても)基本的に許諾なしはアウトなものが多いと思っていたけれど、調べてみると意外にcreative commonsで出典明記すれば転載OKのものもある。オープンアクセス文献なんかはCC-BYやCC-BY-NCが多い(PLOS、BMJ、Nature系のOA文献など)。
たとえばNature publishing groupのライセンスは https://www.nature.com/nature-research/editorial-policies/self-archiving-and-license-to-publish#creative-commons-licences 、PLOSは plos.org/license 、BMJは https://authors.bmj.com/open-access/copyright-licences/ 。さすがにオープンアクセスでない文献まではCC licenceはほとんど無さそう。各CCの内容についてはWikipediaなどを参照のこと。
学会のスライドの写真撮影
日本の医療系学会では学術集会の講演・発表内容の撮影や録音は禁止されていることが多い。もちろん撮影そのものが禁じられているために、撮影した写真をSNSにアップロードするのは不可である。
海外の学会では写真撮影には寛容なこともある。たとえばASCOでは参加者ポリシーの中で、個人的な利用の範囲でスライドを写真撮影することは認められており、また社会的・非営利的な利用は認められている。
https://www.asco.org/sites/new-www.asco.org/files/content-files/about-asco/pdf/ASCO-Meeting-Attendee-Policies-Non-Cosponsored.pdf
最近はWEBでたくさん言及されることが学会の活性化や論文の注目度向上に寄与することも認識されるようになっている。最近は日本循環器内科学会がSNSを盛んに活用したことで話題を集めた。一般演題を除くシンポジウムなど全演者の9割から事前に許諾を得て、盛んにTwitterに発信をしたとのこと。公式アカウントのフォロワー数も倍増し、学会の認知度向上と活性化に大きく貢献した。
スライド撮影を一部のセッションで認めるなどの動きも出てきている。今後は他の学会でも徐々に学会や出版社側もSNSでのデータ利用を奨励する動きが強まってくるかもしれない。
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更新日:2020-05-04 閲覧数:3255 views.