Best of ASCO 2021感想
Best of ASCO Japan 2021 感想
今年も無事開催されましたBest of ASCO Japan 2021。昨年はコロナ禍で急遽WEB開催に変更した関係で1日に短縮されてしまっていましたが今年は入念に準備を進めておられた関係で2日間のフル規格開催でした。
一昨年までのBest of ASCO Japanは、6月初旬に開催されたASCOの内容を受けて7月第1週の土日に東京ビッグサイトで開催されることが定例でした。大学病院にいた頃は毎月第1土曜日にとある町外れの老人病院の当直アルバイトに行っていた関係でいつも参加できずにいましたが、大学病院を離れてからは毎年参加しています。
ログインしました。なんか優雅なクラシックが流れてるけど、BOAJってそういう感じだったっけ。いつも4〜5時起きとかで全国から集まったオンコオタクたちが眠そうな目をして東京ビッグサイトの薄暗い長いエスカレーターを上がっていくイメージなんだけど。しかもだいたいいつも雨
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) July 10, 2021
東京まで行くのは意外と大変で、1泊2日とは言え土曜日は普段より大幅に早起きして家を出る必要がありますし、東京についても一息つくヒマも無く駅の喫茶コーナーでコーヒー1杯飲むくらいでそのまま会場に突入してあとは缶詰めで講義だったので、なかなか大変なイベントでした。
しかし最新の研究成果が発表されたばかりのASCOの演題をもとに闊達な議論を交わし新しい情報を仕入れるのは刺激的で、もっとも楽しいセミナーの1つでもありました。まさにオンコオタクたちのためのイベントです。
WEB開催になってからは
これはJSMO学術集会にも言えることですが、同じ開催時間の長さであればやはりWEB開催のほうが圧倒的に体力的には楽ですね。朝は5時に家を出るような無理なスケジュールを組む必要も無いし、スーツを着て革靴を履く必要もありませんから普段の自分の部屋でラフな格好で過ごせます。好きな時間におやつを食べたり、コーヒーを飲んだり、トイレに行ったりできます。
そして、ノートを取ったり調べ毎をしながら講義を聴くのもやはり自宅でWEB参加できるほうが楽ちんです。Pubmedなどにアクセスするにもパソコンが手元にあるし、電池が切れる心配もありません。ちょっと関心領域から離れていて聞かない演題がある場合はパソコンの周りを離れて自分の用事を済ませに行くのも自由ですしね。
今回のWEBシステムはvimeoというのを使っているようでした。JSMO2021と同じzoomを使うと思っていたのでこれは意外です。移動しながら使う場合はzoomは一旦接続が切れてもすぐ再接続されるのに対してvimeoは一旦きれるとログインからやり直す必要がありました。しかし概ね音質・画質も問題なく、まずまず満足です。
テキスト
テキストはWEB開催なのでPDFで配布されて各自で印刷する方式です。紙質やプリンタの性能もあるのでしょうけれど、家庭用のインクジェットプリンターでPDFを印刷するとどうしても印刷屋さんの印刷物のようにはきれいにならず、インクのにじみがあったり紙が湿気でふやけたりとちょっと残念なことになってしまうので、やっぱりテキストはしっかりした印刷物が郵送されてくる方がいいかなぁ。癌治療認定医のセミナーのテキストは(Best of ASCO Japanのテキストよりもずっと薄いですが)それなりにちゃんとしっかり製本されているので、ああいうのができればよいのですが。
演題の内容
Best of ASCOの醍醐味は演題の発表そのものではなくその後のディスカッションにあると思っていますので、やはりディスカッションが盛り上がっていた演題は聞いていて楽しかったですね。乳癌や非小細胞肺癌は領域のエビデンスの「厚み」もあり議論の切り口が豊富ですので盛り上がりがちです。gBRCA乳癌に対するオラパリブのOlympiAがBest of Best of ASCO 2021に選ばれましたが、このOlympiAや肺癌のIMPACT試験(術後ゲフィチニブ vs 化学療法)のディスカッションが特に聞いていて楽しかった演題でした。
これは普段から考えていることですが、予後が数年以内と限られたmetastatic settingと比べて周術期化学療法ではより「がん治療後のその人の生活」までを長期的に考える必要があるので、腫瘍内科医の腕の見せ所が多いと思っています。もちろん進行再発のステージでACPや緩和ケアも含めたケアも必要なのですが、それらのテーマは今までも盛んに議論されてきたのに比べて周術期化学療法はまだ今から考えてゆかなければならないテーマがたくさんあると感じます。
そういえばKEYNOTE-811(HER2陽性胃癌へのトラスツズマブ+ペムブロリズマブ上乗せ)とかMyPathway(臓器横断的HER2陽性ペルツズマブ+トラスツズマブ)が入ってないのはともかく、JACCRO CC-13 DEEPER(FOLFOXIRI+Cet)も入ってないのね…これは意外。。。なんで?
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) June 28, 2021
消化器癌ではJACCRO CC-13(DEEPER)試験が選ばれていなかったのは少し意外でした。日本からのエビデンスであり、FOLFOXIRI+Bev vs FOLFOXIRI+Cetというhead to headの比較試験ですので注目度も高かったはずですが、あまりハッキリとした差が見られなかった結果や、DpRという少し風変わりなエンドポイントが、議論へつながりにくいと判断されたのでしょうか…?
肺癌ばっかり有望なドライバーターゲットが出てきてずるいよなぁ
— レ点.bot💉💊🧬 (@m0370) July 10, 2021
そして個々の演題とは少し離れますがオンコロジーライブセミナー(つまりスポンサードセミナー)で何度も出てきた非小細胞肺癌の希少ゲノムフラクションへの標的治療の発展は本当にすばらしく、これだけ発展が順調(もちろんその分野に関わる方にしかわからない苦労もあるのだと思いますが)だと仕事としてやるのも最高にやりがいがあるだろうなぁと少しうらやましくも感じました。
まとめ
2日間のWEB開催なので体力的に持つかと少し心配していましたが、結果的には体力的には全然問題なし、むしろまだまだ物足りず明日もDay3をやってほしいくらいです。今年のBest of ASCO 2021は終わってしまいましたが、ぜひ来年も参加したいと思います。
そういえば、来週はエキパネ道場というがんゲノム医療に限定したセミナーが開催されます。こちらも着々と準備が進んでいるようですが、これまでになかったタイプのセミナーですので非常に楽しみです。
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更新日:2021-07-11 閲覧数:1036 views.